何度でも繰り返し見てしまう映画というものが何本かあって、それはその作品を反復して鑑賞するということではなく、作品がかつてもたらした感動を反復するためなのだ。この両者はまったく違うことで、見るたびに新しい感動を発見する映画、というのは少なく…

冷戦時代のスパイ活動を描く映画で、「西側」のアームストロング教授が、ミサイル開発のために必要な方程式を入手しようと「東側」へ偽装亡命をする。その仕儀は完全な偽計であり窃盗であるが、当人も演ずる俳優も制作者もその行為の卑劣さを全く意識してい…

「旅情」や「慕情」が製作された1955年、わが邦画界はどうだったろうか。たまたま同年製作の日本映画「浮雲」を見ることができた。原作は二葉亭四迷ではなく、林芙美子である。しかしどうしようもない話で、仕方がないから小説も引っ張り出して、その冒頭の…

芸のない邦題。 酒好き女好きのお気楽下院議員(チャーリー・ウィルソン/トム・ハンクス)が、実はその有するすぐれた能力で世界を実際に変えていく様を描いた、実話ベースの、実に啓発的な映画だ。その議員の以下のコンピテンシーに着目せよ。 ①人間関係、貸…

「旅情」と同じ年に作られたこの映画を、現在に至るまで見る機会がなかった。見る機会、とは私の場合、衛星放送かWOWOWかで放送してくれるか、DVDが千円以下で売っているか、どちらかを意味する。しかしyoutubeをよくよく見ると、今まではそこで主題歌だけを…

この映画は、ただ再見に堪えるのはその背景であるヴェニスの風景のみであり、話自体には反復鑑賞を誘うものはない。この映画で見たヴェニスへの愛着から、買い求めたDVDで時々見るのだが、見るにつけヒロインの清教徒的ヒステリーが鼻につくようになる。そし…