2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

続・激突 ! カージャック

最近、「実話による」とか、「実話に触発されて」というような断り書きのある映画が多い。事実を凌駕しうるような虚構の創作が困難になっているのに加えて、「実話」特有のお得な効用に寄りかかっているためもある。効用その一、ドラマツルギーの弱さを責め…

捜索者

ジョン・フォード晩年の異色作。 男たちが巧みにおびき出され、女子供だけになった家を襲うコマンチ族。二人の姉妹を拉致するのが目的で、残りの家族はすべて惨殺された。姉妹の叔父、ジョン・ウェインがコマンチを追跡するが、この映画の彼はヒーローを演じ…

フランス秘密警察GIGN エールフランス8961便ハイジャック事件

1994年、アルジェで発生したハイジャック事件を描く。フランス特殊警察GIGNのハイジャック機奪回作戦と言っても特に策があるわけではない。彼らは乗客や突入部隊員に死者が出ることを予め計算に入れてあるので、いくらでも乱暴なことができる。第一それ以前…

踊る大捜査線  THE MOVIE 3  ヤツらを解放せよ

未だに「センチメント」を以て事件の解決策としている、メンタルの上での日本の後進性あるいは独自性。そしてこのセンチメントを、ありえない保身的署長たちやありえない強圧的本庁の警官たちと共存させているということは、制作者もこのセンチメントの有効…

新しい人生のはじめかた

どちらかと言えば知性がウリの女優、しばしばその知性がイヤミに思えるくらいのエマ・トンプソンが、この映画では妙に肉感的に見える。ダスティン・ホフマンの隣に置いたせいか、他に魅力的な女優が出ていないためか。黒いドレスから覗いた彼女の丸い膝にほ…

フェイトレス 運命ではなく

ユダヤ人強制収容所「もの」を2時間半にもわたって見せられるなんてぞっとしない。すでに十分にこの話は語られつくされていると思うし、自分もイヤになるほどこのテの映画は見ているはず、と思い振り返ってみたら、収容所ものとゲットーものをあわせても、こ…

プレデターズ

エイドリアン・ブロディー、筋トレをして本作に臨む。ハリウッド俳優って凄く効率的に筋肉をつけるけれど、ステロイドの卓効、顕著。まさか戦場のピアニストがシュワルツネガー、スタローンの仲間入りをするとは。とは言えエイドリアンにはまだあまり自信が…

百万長者と結婚する方法

これは多分一回は見ている映画で、ただモンロー映画でつまらないから内容を忘れているのだろうと思っていたが、実は全く見ていない映画だった。しかしやはりつまらない点では同断。冒頭オーケストラが丸々一曲演奏するシーンを長々と映すのでびっくりした。…

インビクタス 負けざる者たち

ワールドカップやオリンピックに対して、そのスポーツ・ナショナリズムを批判する方々はこの映画を見ると良い。国というものに散々痛めつけられたネルソン・マンデラが、国の統一と士気高揚のためにごく自然に志向したのが、ラグビーによる民族を超えた国民…

泥棒成金/クローサー

半世紀を隔てて作られた二つの作品をたまたま続けて見てしまっての感想。 「泥棒成金」 この上なく映画が好きなくせに、こういう映画を見ると、思わず「映画的恋愛物語」と言ってしまいたくなる。映画的、ってどういう意味 ? 目が覚めないうちに面白がれれば…

華麗なる一族/白い巨塔

1960年代、写真集にもなった三島由紀夫の邸宅は、当時は優雅な成功というものの象徴の様に見えた。しかし三島の死後、早くも80年代には、野球選手でも三島の家よりはるかに豪華な家に住めるようになる、ということになる。 今、「華麗なる一族」を見ると、優…

オーケストラ !

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に、端的に感動した。 音楽を聖性顕現として表わすために、本番前の練習をいっさい見せないし、聞かせない。ために、あたかもリハなしでコンサートをやったかのような無理のある設定になっている。しかし音合わせもなし…

ザ・ファイター

佳作。主人公のボクサーの足を引っ張るダメな家族の描き方が面白い。基本的に低脳で自己中な姉妹たち。ヤク中の兄。押し付けがましく愛で拘束する母と全く威厳のない父。エイミー・アダムズが三枚目でもうぶでもなく最高に「いい女」として出ていた。マーク・…

ストーン

デ・ニーロってすっかりイヤミな鼻男になってしまったなあ。往年の二枚目の面影はもうない。キーノートであるキリスト教宣導師のゴタクが利いている。キリスト教に拠り、無気力に従順になっていく、人格に欠陥のある釈放監理官デ・ニーロの妻。一方、新興宗教…

アラバマ物語

大昔に見た映画の再見。すっかり内容を忘れていて、最後の最後にセリフが一つもない若いロバート・デュヴァルが出てくることすら忘れていた。黒人が無実の罪で殺されてしまう、という暗澹たる話だが、主人公の英明なる弁護士や、実に明るく活発で可愛い二人…

ダイ・アナザー・デイ

ピアース・ブロスナンのジェームズ・ボンドは愛嬌も色気もなくつまらない。加えてアカデミー賞が泣くとまでは言わないが、単にボディを見せているだけのハル・ベリー。「ダイヤモンドは永遠に」の焼き直し版かと思ったが、歴代の作品からいろいろ引用して作…

キングフィッシュ 大統領への挑戦

1930年代、ルーズベルトに対抗してアメリカ大統領を目指した上院議員ヒューイ・ロングの実話。このロングをモデルにした、ウィリー・スタークを主人公にしたピュリッツァー賞受賞作が「オール・ザ・キングスメン」。後者は1949年に映画化され、2007年にもシ…

ロミオとジュリエット

ジュリエットに扮した17歳のオリヴィア・ハッセーが、その可憐さで一躍人気女優になったが、むしろ私はロミオに扮した18歳のレナード・ホワイティングの方の美に幻惑された。ベローナの街の傾斜した道を登ってくる登場のシーンで、早くもその朝方の露のよう…

U.S.ソルジャーズ

米軍の中に私的な極右組織があり、基地の外で犯罪活動をしているのを、某将軍の密命を受けて内定する元傭兵の話。ツッコミ所満載のB級映画。これだけ犯罪が歴然としながら、写真もとらず録音もしないで、「しかし、証拠がない」などと言って手をこまね、その…

用心棒

黒澤の映画はつい「世界商品」目線で見てしまうが、この映画が本当に世界商品レベルになっているのか良く分らない。外国人が持つ日本幻想を剥ぎ取ったあとも、本当に面白い映画になっているのか。殺陣に初めて擬音を入れたというような歴史的経緯を知っていな…

ザ・ワン

ジェット・リーは東洋人の俳優の中では一、二番目に好きな俳優だ。単なるアクション系ではない、東洋人の静かさと英知をかもし出せる俳優として。しかしこの映画などは、主人公をジェット・リーが演ずる必要性はさらさらない。ジャン・クロード・バンダムに…

ボストニアン

説教師の若い娘(マデリーヌ・ポター)と彼女に恋する女性(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)とが完全なミスキャストに思える。前者は幼すぎ、後者は老嬢すぎる。ヘンリー・ジェイムスの原作小説ならその濃厚な文章の力で説得されていたかもしれないが、映像からは…

デストラップ 死の罠

どんでん返しを楽しんでください、というものらしいが、途中から嫌になる。誰が誰を殺そうといいではないか。生の蕩尽にもならない、生命の無駄遣いとしか思えない。このような映画を作る行為もそれを見る行為も。もっと平板で何も起こらない現実のほうがは…

アンストッパブル

パニック・アクションものの定型中の定型、という映画。登場人物の背景を手際よく紹介していくスタンダードな手法は注目すべきだが、この手の映画につきものの、めでたく解決したとき皆で歓声を上げて喜び合うというシーン、それは滑ると少し恥ずかしいシーン…

ヤバい経済学

さして面白くない。経済学の体裁を借りて、どうとでも言えることを好きなように言っているだけの話。ホリエモンの「金で買えない人間はいない」同様の、一見ショッキングな言明のようなもので、それは単に「金で買える人間は金で買える」というトートロジー…

猿の惑星 創世記(ジェネシス)

1968年に作られた第一作「猿の惑星」は、第二次大戦で日本軍の捕虜になったフランス人ピエール・ブールによって作られた、その捕虜体験の意趣返しの悔日映画であった。 当初、猿が他ならぬ自分達日本人を指していることなど思い至らぬ大部分の日本人は、これ…

再説 「チベットの女 イシの生涯」

以前、この映画(2000年中国、監督シェ・フェイ)について「劇中、毛沢東の肖像写真が一度だけ出るが、それ以外は中国共産党の存在は気配すらない。ラサの領主を亡命に追いやり、農奴を解放した共産軍の姿がなぜ出てこないのか。ダライ=ラマと中国政府との対立…

ロビン・フッド

かのケビン・コスナーの映画(1991)とはだいぶ違う仕上がりになっており、ロビンはもう森の中の義賊ではなく、フランス侵略軍と戦う英国領主の養子である。リチャード獅子心王、その弟ジョン王とイザベラ妃、フランス王フィリップ二世などが出てきて歴史の勉…

ダブルフェイス 秘めた女

「秘めた女」って何 ? WOWOWオンラインに曰く、―ひとつに重なるココロとカラダが、禁断の秘密を呼び覚ます― 「秘めた女」、といい、「禁断の秘密」、といい、なんだかフンイキ先行の訳の分らない日本語が横行している。この映画のどこが禁断なのか。またモニ…

ラスト・アサシン

駄作。女殺し屋の話だが、殺しの手段が銃ではマンネリで面白くないとでも思ったのか(DVDのジャケットではメラニー・ロランに「ニキータ」風に銃をもたせているにも係わらず)、毒殺専門にしている。しかしこの毒殺の手際の悪いこと悪いこと、どこが凄腕の殺し…