2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

真昼の用心棒

「真昼の用心棒」は私が見たマカロニ・ウェスタンの中で一番好きな映画だった。私が見たと言ってもこのフランコ・ネロのものが二本、ジュリアーノ・ジェンマのものが二本。それにクリント・イーストウッドがやはり二本か三本か。このジャンルの映画のタイト…

ワン・チャンス

何か音楽というものに感動したい、打ちのめされたい、と思って映画館に行ったのだけれど、まあ予告編を見て事前に予測していた範囲内の話だった。しかし奥さんがよく出来た女性で、これは、都はるみの「夫婦坂」の英国版ではないかと思い、そちらのほうに感…

コールド・バレッツ 裏切りの陰謀

たまたま見たこの映画の舞台が、「ソフイアの夜明け」と同じブルガリアの首都ソフィア。原題がずばり「Sofia」。アメリカの娯楽映画だから「ソフィアの夜明け」みたいなブルガリアの現実はいらない。ただ殺し屋が安心して人を殺せるような暗い裏通りをだけ提…

ソフィアの夜明け

予想通り気が滅入るだけの映画。映画の中の人物がことごとく一観客に過ぎないこの私より( 精神的にも肉体的にも )劣っている。同情して見るしかない映画はもはや映画ではない。社会学的考察の資料、ブルガリアというかつて共産圏に属していた国の現状分析、…

なんだか釈然としない映画。男を篭絡して利得を得ていく女の話らしいが、こういう映画は観客がその女に魅せられなければつまらないだけ。そして(裸体を見せるにもかかわらず)女がイザベル・ユペールでは魅せられようはずもない。 日本の風俗、風景も出てくる…

わらの犬

サム・ペキンパーの同名映画(1971)のリメイク。その旧作は見ているはずだが、内容はほとんど忘れており、初めて見る様な思いがした。後で調べてみたら、ダスティン・ホフマンの数学者が脚本家に、イギリス、コーンウェルの田舎がアメリカ南部に変わっている…

スーパー・チューズデー 正義を売った日

イラストレーターの安西水丸氏が他界した。合掌。 彼の絵は嫌いではない。というよりむしろ大好きなほうである。しかし彼と小山薫堂コンビの、WOWOWの映画解説が私は大嫌いで、気が抜けるので、見ないようにしていた。その二人がこの映画の事後解説で「はじ…

質屋

これは大昔、テレビで見た映画。町山智浩氏が「トラウマ映画館」でリバイバルさせてくれた。昔は映画もタイトルの付け方が素直だったな。今だったら、こんな地味なタイトルでは売れないから、ニューヨークの片隅の涙、とか副題がつきかねない。 しかし、こん…

11. 25 自決の日 三島由紀夫と若者たち

三島由紀夫をノッポで貧弱な体格の俳優に演じられても困る。オリジナルの三島のカリスマ性など微塵もない。もっともカリスマという言葉も理容師に使われるくらい減価してしまったから、今の役者にカリスマを求めるのがそもそも無理な話か。森田必勝役の青年…

ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮

こんな扇情的な副題をつけられたのが気の毒になるくらいの、正統的な歴史ドラマ。 せっかく王女の情事を描くのだからもっと美女美男を出して欲しかったが、実在の人物たるカロリーネ・マチルダ王妃もストルーエンセ侍医も、後で調べてみた画像と比べたら、映…

アイリス

つらいつらい、ひたすらつらい映画。ヒロインの若き時代の奔放な性の、愛に対する残酷もつらいし、その彼女が老年となってアルツハイマーを患うというのもこれまた当然のことながらつらい。あまりにつらすぎるので、それが「下半身のムズムズ」(by サルトル)…

カジノ

あたり前だが、経営することと所有することとは別物だ。カジノの所有者がチームスターを牛耳る組合ボスだとは知らなかった。カジノの経営者は単なる雇われ人に過ぎない。所有者はその被所有物との無機質な距離に安住して、既得権を守るために殺戮を繰り返す…

日本残侠伝

着物姿の女性の可憐さ、同じく着物姿の日本の男の立ち居振る舞いのイキさ、小気味よい啖呵などに魅せられ、これはダビングして保存しようと思ったが、最後のところで高橋英樹が泣き崩れてしまったので、残念ながら保存は見合わせた。ここはやはり、背中を見…

シャーロック・ホームズ シャドウゲーム

やはりロバート・ダウニー・ジュニアのミスキャスト振りが許容範囲外で、途中でやめる。知的推理小説をただの荒唐無稽なアクション映画にしている時点でアウト。さらにホームズの外貌を含め、画面の悉くが小汚いなのは決定的な失点。もっとも19世紀のロン…

冬のライオン

時は12世紀、イングランド王ヘンリー2世の跡継ぎをめぐる紛糾を描く。ヤクザの跡目争いとは違い、王位継承は血族内の紛糾なので、すこし厄介である。めでたく王位を継承したものが、後難を恐れて対立候補者を亡き者にしてしまう、という点は両者は共通し…

ジャンヌ・ダーク

ジャンヌ・ダークを描いた映画は数多い。これまでに見たのは1999年のリュック・ベッソンの「ジャンヌ・ダルク」と1957年のオットー・プレミンジャー「聖女ジャンヌ・ダルク」、それに今回の1948年ヴィクター・フレミングの「ジャンヌ・ダーク」。別に特段ジ…

フライト

「フライト」って、通常の「飛行」という意味と、ウラに「逃走」という意味も含めてか。あるいはアルコールでハイになっていることをも指しているのか。 最初の方に飛行機の不時着という映画的スペクタクル的見せ場があってしまうので、その後の保たせ方が難…

ロング・グッドバイ

大昔見て、それなりに面白かったような記憶があったが、今見ると全然面白くない。大体エリオット・グールドってフィリップ・マーロウのイメージからあまりに遠すぎる役者だ。消閑にも何にもならずがっかり。 「さらば愛しき女よ」「大いなる眠り」のロバート…

ヒート

重厚なクライム・ストーリー。 デ・ニーロは悪役のほうが似合う。アル・パチーノもどちらかと言えば悪役向きだ。しかし両者とも善役もこなせるのだから、つまりはいい俳優なのだろう。悪役のイメージを決して引きずらずに、ヒーローを演ずることもできる。考…

レッド・ステイト

キリスト教原理主義者はもとより恐ろしいが、彼らをテロリストとして「愛国者法」の適用下に起き、自分たちの捜査ミスを糊塗するために、あるいは「面倒だから」まずは皆殺しを図り、皆殺しをまぬかれたものは裁判抜きで拘束し一生刑務所にぶち込むというア…

ニュルンベルク裁判

裁判劇が得意なアメリカだから、「戦争犯罪」を裁く軍事法廷を描くこの映画も、その小気味よいドラマツルギーで見せてしまうけれど、極東国際軍事裁判という裁判の被告だった日本人から見れば、そんなに心地よくは騙されない映画である。判事の良心的苦悩や…

エーゲ海の天使

ユルい映画。ギリシャに対してすらオリエント幻想があるのか知らん、ギリシャの島の女がまるで南海の孤島のネイティヴ女のように、おおらかにイタリア兵士を迎える様が描かれる。原題は「地中海」だから、わざわざギリシャに赴かずとも自国でやればよさそう…

コロンビアーナ

このごろ映画がますます凶暴になる一方であることの背景。 ○悪の帝国ソ連が消滅してしまい、残る悪の帝国北朝鮮はその役を演ずるにはあまりに貧乏すぎる。 ○人間悪の全てをナチスに押しつけることをさんざっぱらやってしまい、もうネタ切れ気味。―この矛先が…

エメランスの扉

西洋人は度し難い。子供が可愛がっていた子牛を、愛ゆえに悲しまないことを子供に教えるために、子供の目の前で屠殺する父親とか、あるいは、双子の子供が落雷の直撃を受けて炭になってしまったのを見た直後に、井戸に身を投げて死んでしまう母親とか。前者…

マイティ・ハート 愛と絆

パキスタン・タリバンの人質になったアメリカ人の救済を巡る話。原作が被害者の妻であるだけに、リアルで切実な物語だが、結局政治的反対物を「テロ」という誰も文句がつけられない悪に規定して、そのテロに屈しないアメリカ、というアメリカの宣伝映画みた…

レディー・ジョーカー

例によってセリフがよく聴き取れず(刑事に扮した國村隼という役者、変に感じを出そうとしているのか地なのか、口の中でボソボソ言って良く聞こえない)。 とにかく被差別部落、在日、それに障害者というマイノリティーが闇の世界につながっていくという感触が…

天国から来たチャンピオン

死者が天国から戻ってきてこの世に善行を施す、といういくつかあるパターンの物語だが、これはまた「王子と乞食」という物語のパターンでもある。一市民が何かの拍子に権力者の身代わりになったら、権力者の悪行を改善してこういう善行を施すという話。しか…

ディナー・ラッシュ

意外な結末のある、佳作。 エドアルド・バレリーニという主演男優、ジェット・リーに良く似ていてクールでよい。「殺し屋」というものの存在意義が良く分かる映画ではある。ストーリーには意外性をもたらし、現実には、不可能と思われた問題を一気に解決する…

ザ・イースト

エコ・テロリストを描く映画だが、この映画で扱われるテロリストは、その攻撃対象が強い副作用を持つ薬を売りさばく製薬会社だったり、廃棄物を垂れ流して湖沼を汚染する企業だったりするので、まだその動機に共感する余地がある。だからこの映画で怖いのは…

霧笛が俺を呼んでいる

赤木圭一郎は物腰がすこしオネエだが十分魅力的だし、初々しい新人としての吉永小百合も出ている。しかしお話が全然ダメ。死んだと思った親友が実は生きていた、というのは明らかに「第三の男」(1949)の翻案だが、悪の哲学を語るオーソン・ウェルズはなく、…