2012-01-01から1年間の記事一覧

ボスタ 踊る幸福の赤いバス

レバノン版「踊るマハラジャ」という映画。それにしても、例によって説明的なこの邦題。「バス」という意味だけのBOSTAという原題に、たちまち「踊る」やら「幸福」やら「赤い」やらをつけてしまう。余韻と含蓄を重んじる日本語はいずこに。そして、「赤いバ…

マイファミリー・ウェディング

ラテン系アメリカ人とアフリカ系アメリカ人とが、子息の異人種間結婚をめぐって紛糾する。互いの価値観や文化的背景の違いから当然反目しあうのだが、その際の彼等の徹底した闘争、そして彼等の恐るべき忍耐、そのベースにある彼等の素晴らしい自恃の念を見…

マイ・ビッグ・ファット・ドリーム

MY LIFE IN RUINS という原題が、なぜこのようなタイトルかというに、主演女優ニア・ヴァルダロスが「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」(MY BIG FAT GREEK WEDDING 2002)というヒット映画の女優であるから。彼女はこの映画の原作者でもある。つまり彼…

シリアスマン

評する言葉を失うくらいヘンな映画だ。それは非ユダヤ教徒からみたユダヤ教徒のヘンさ加減でもあるし、ユダヤ教徒から見た非ユダヤ社会のヘンさ加減でもある。日常生活の対人関係の少しづつのズレ、夫婦、親子、隣人、同僚等との関係の食い違いというものは…

ロシア・ハウス

「ロシア・ハウス」と言っても、もちろん「ムネオ・ハウス」のことではなく、ジョン・ル・カレ原作の正統的スパイ映画であるが、それのみならず、正統的恋愛映画でもあるので、できればミシェル・ファイファーの如く安っぽい顔の女優でなく見たかったところ…

シングル・マン

「ブロークバック・マウンテン」などもそうだけれど、こういうゲイ映画はヘテロな私には感情移入が難しい。それでもこれは映像美が溢れていて結構見せる映画である。初対面の男同士が、同好の士であるかどうか確かめるための、間合いを計る微妙な目つきを延…

十三人の刺客

工藤栄一監督の同タイトル映画(1963年)のリメイク版。 力作であり、山田孝之などなかなか面構えのよい俳優も出ていた。二百名の敵を弓と火薬で百二十人ほどに減らし、勢力が十対一ほどになったところで白刃戦になる。これは剣戟を見せるにはいい展開だが、勝…

昼下がりの情事

afternoonを「昼下がり」と訳すほど、そしてloveを「情事」と訳すほど優雅な時代の映画だが、私の目には、ゲイリー・クーパーがただの爺さんにしか見えないので、恋愛映画として楽しめなかった。クーパーは煮え切らないガンマンでもやっているのが一番よく似…

緑の館

この映画は興行的にも評価的にも失敗した作品らしい。大昔に一度見ているが、現在見てもやはり面白くない映画である。ラストシーンで、森の奥に光り輝くリーマ(オードリー・ヘプバーン)が現われるあたりは、もう完全に失効した人間の夢想のパターンを示して…

イエロー・ハンカチーフ

オリジナル「幸福の黄色いハンカチ」(1977)にもそもそも「感動」できなかったけれど、タイトルから「幸福」などという甘えた言葉を取っ払った、ドライなハリウッド・リメイク版、主人公も健さんではなく、とみに容色が衰えて普通のおじさんになったしまった…

パニック・ルーム

最近、銃乱射事件が相次ぎ、銃規制論議が再燃しているらしいアメリカ。しかしアメリカから銃が消えることを期待するのは、それこそ百年河清を待つに等しいことのように思える。それにいくら銃を規制しても、やる奴は刃物でも何でも振り回すだろう、と思って…

プロヴァンス物語 マルセルの夏

オープニングではプロヴァンスの詰屈とした風景に軽快な音楽が流れ、久しぶりに映画を見る快感が味わえるような予感がしたが、始まってみるとあまりにたわいもない話で、つまらなかった。私からは少年の心というものが徹底的に失われているらしい。20世紀初…

突撃隊

TVドラマ「コンバット」の原型みたいな映画。この映画が1961年で、「コンバット」の放映開始が翌年の1962年だ。後者には、多分この映画に対するオマージュと思われる「Hills are for Heroes」という挿話がある(「突撃隊」の原題は「Hell is for Heroes」)。…

バルタザールどこへ行く/少女ムシェット

両作とも感銘を受けることはできなかった。むしろ、全く面白くもなく美しくもなく楽しくもない映画だった。ともかく個々の映像に、監督がしていたであろうような美的耽溺ができない。映像というものが物として貴重であった頃、人間が映っていてそれが動いた…

愛と死の間で

他ならぬケネス・ブラナーとエマ・トンプソンの映画なのだから、もう少し品の良い仕上がりでも良かったのに、なんだかただのスプラッタ映画のようになってしまった。映画の基調トーンがそうなので、ロビン・ウィリアムズも過去を持つ老練な精神科医とも見え…

エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事

ダニエル・デイ=ルイスがまだ二枚目をやっていた頃の映画。「運命の恋」を描く映画だが、そのテーマ自体がもうすでに退屈である。第一ミシェル・ファイファーは一応の美形だけれど、あまりに安っぽい女優で、どう見てもファム・ファタルには見えない。十九世…

ギリシャ人、ゾルバ

「その男ゾルバ」と意訳した邦題にはなかなか味がある。ギリシャ人ゾルバ、と言うけれど、見ているうちにアンソニー・クイン扮するゾルバは流暢に英語を話すニセモノのギリシャ人に過ぎないと思えてくる。本物のギリシャ人は、悶死した息子の恋の相手をナイ…

ミスター・ベースボール

この手の映画をいったい誰が見るのだろう。野球が出てくればなんでもいいという野球ファン ? あるいはトム・セレックのファン ? もしかしたら高倉健のファンか。しかしこの三種のファンの誰が見ても面白いとは思えない映画。日本野球の実戦シーンなどはなか…

ポルターガイスト

有名なこの映画を見る機会があったが、基本的にアメリカのホームドラマ風に映像が明るく、「エクソシスト」のような、生理的不快さという意味の怖さはない。末女は確かに異界に連れ去られるが、それを含めても幽霊たちはまるで遊園地のお化け屋敷のそれのよ…

心みだれて

脚本家・監督のノーラ・エフロンの原作で、自身のカール・バーンスタインとの結婚生活を題材にしている。彼女はこのあとメグ・ライアンの「恋人たちの予感」「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の脚本を書き、後二者では監督もして「ロマンチック・コメ…

ジョーイ・ナードン 不屈の一撃

佳作。主人公がトニー・ルーク・ジュニアというアンチ・ビジュアル系で、それでもこれだけ見せるのだから凄い。元ヘビー級ボクサーという設定だが、確かに体重は申し分ないが、背丈としては果たしてヘビー級か。あまり情報のない俳優だが、英語のWIKIで見ると…

世代

ドイツ軍占領下のワルシャワ・ゲットーの話。内容は人間の非道とそれに対する抵抗という、すでに知りすぎているくらい知っているものだが、非常に若いロマン・ポランスキーが端役で出ていたのが目新しかった。後年、その性的オブセッション由来のさまざまなス…

オリエント急行殺人事件

すでにデビッド・スーシェによるすばらしいポワロ像を得た今では、アルバート・フィニーによるポワロはただの奇矯なだけの男に過ぎないように見える。そのほか、ヴァネッサ・レッドグレーヴって実は美人だったのか、とか。ショーン.コネリーは脇役に回るとた…

アメリア 永遠の翼

「アメリア」という、個的な存在を言いつくして余りある、固有名詞だけのタイトルが日本に持ち込まれると、それに「永遠の翼」なる陳腐なクリシエがついてしまう。そしてそれを見る私は、そのクリシエから何か生きる喜びというものが見出せるのかと期待して…

陰謀の代償 NYコンフィデンシャル

ジェームス・ディーンによく似たチャニング・テイタム主演。警察モノでアル・パチーノ、レイ・リオッタが出てくるとなると大体ハナシは見えてくるが、ジュリエット・ビノシュが新聞記者役で出るに及び、少しその予見を訂正した。警察の腐敗というものを真面…

ガス燈

どういう訳か初見のつもりで見ていたが、しばらくして以前に見ていたことに気がつく(見ていたどころかそのDVDを所有さえしていた)。これが1940年の英国版なら希少らしいが、1944年の米国版。見ていたとは言え、あらかた筋は忘れていたので、そのまま見ること…

アフリカを出よ

かつてはそれなりに風情があった日本語独自のタイトルのセンスがそのまま時代遅れになってしまった典型のような邦題だった。とはいえ、中身も時代遅れで、アフリカの風物で最初は見せるが、やがてそれに見飽きると、アフリカを巡る政争の話になんとか興味を…

新・泥棒株式会社

映画という娯楽作品は結構古びるのが早い。「笑い」というものは常に新奇さを追いかけているものなので、とりわけ喜劇映画が一番古びるのが早いような気がする。この映画のつまらないこと、殆んど殺人的である。なぜこれを面白がれたのか、面白がれた時代が…

バレッツ

出だしにはいいアクション映画の感触があったが、ストーリーのあらかたが見えてくると、後はただ陰惨さだけが鼻について楽しめない。やたらに家族の愛が強調されるシーンのあとには、必ずその家族が殺されるか暴行を受ける場面を見せられる。このあくどさが…

エルダー兄弟

字幕でジョン・ウェインのことを身長2メートルの大男としているので、さすがに2メートルはどうかと思い、ジョン・ウェイン小男説をネットで探して見る。やれ大きく見えるように特別のセットを作っていたとか、特別に小さな馬に乗ったりしていたというような…