2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

クライム&ダイヤモンド/ハイ・クライムズ

クライム・サスペンスというから期待してみたら、すでに終わってしまった話が小出しに語られる映画、さらに映画で映画を語るという二重に再帰的な映画で、サスペンスも何もなく、これはつまらなくて途中でやめる。ときどき、定期的といっても良い頻度で、こう…

ホステージ

ハリウッド・アクション映画も、あまり見すぎると、陳腐な物語の際限のない反復を見る思いがしてくるだろう。「家族」という大きな制度の中で、その制度の中に住むことを強いられているがゆえに、個々の家族の破綻から、怨恨と不満と犯罪が生れる。その犯罪に、…

ギャング・オブ・ニューヨーク

この映画で描かれるアメリカ人同士の凄惨な殺戮は、血まみれのアメリカ建国史のほんの一部に過ぎない。つまり先住民との抗争だけが、アメリカにおける暴力史を形成しているわけではない。この映画のタイトルを聞いたときに、直感的にそのことを思ったが、ま…

エレファント/ボウリング・フォー・コロンバイン

「エレファント」、一切の予備知識なく、全くたまたま見た映画で、なんとなくユルい展開の映画だなと思って見ていたが、もしかしたら例のコロンバイン高校の虐殺の話かと気づいた頃には、すでに避けようもなく彼等の殺戮への意志は動き出していた。この、ユ…

愛の泉

昔の映画では、クレジットタイトルが映画の本編開始前にすべて流れる。冒頭でキャスト、スタッフ名がすべて知らされ、この映画ではシナトラの主題歌までたっぷりと聞かされた。冒頭部のこの歌だけで、いい映画を見た感動を味わったような気がした。アカデミ…

トマ@トマ

この映画で、近未来の性のあり方とするWEBでのヴァーチャルな性愛というものは面白いが、考えてみればこれはすでに現実に生起している事態だ。保険会社が契約者の健康管理のために、訓練された娼婦を使って性欲までをも管理する、ということはさすがに現実か…

ザ・タウン

久々に面白い犯罪映画。ベン・アフレックもにやけた役でなければ結構見られる。ただし、ラストの終わらせ方は甘すぎて、ひたすらハードだった全体の雰囲気とも話の流れとも合わない。おおかた、いくつかあるエンディングのうち、最も無難な、つまり最もつま…

セックス・クラブ

「ファイト・クラブ」と原作者が同じ(チャック・パラニューク)なのでつけたものだろうが、ひでえ邦題。原題の「choke」も良く分らないタイトルだが、映画館の窓口で「せっくす・くらぶ一枚 ! 」と言えるくらい、吹っ切れている人でないと、この映画の観賞はで…

幸せ色のルビー

邦題はずいぶん軽い印象だが、内実は陰鬱なテーマを含んだ映画だ。しかしこれはずいぶんユダヤ教のラビというものを卑小視してみせた映画である。ここでは、ラビはただ神の前にほとんど判断停止しているだけの存在に過ぎない。その世界を因習とみなして離脱…

バビロンの陽光

クルド人の少年とその祖母。フセイン失脚三週間後、かって兵士として狩り出されバース党に逮捕された少年の父を探しに行く旅。クルド地区から南下してバグダッドへ、さらにその南のナシリアの刑務所を尋ねる。いつ来るのか分らず、ようやく来てもすぐ故障し…

クルドの花

イラン・イラク戦争時のクルド人虐殺事件を背景に、アラブ人の女性とクルド人男性との愛を描いたもの。しかし、一組の男女のいかなる純愛を以てしても、互いに憎み合い殺しあう地上の人間どもの悲惨さを軽減できない。ただ、その医者であるアラブ人女性の行為…

モンスーン・ウェディング

資本主義の成熟とともにすこしずつアメリカに侵食されつつあるインド。しかし結婚式という儀式の世界では、旧来のインドが立ち現れ、日常を浸していたアメリカ的な世界が借り物の世界に過ぎなかったことを露見させる。そのときインド固有の世界が、普遍を僭…

愛されるために、ここにいる

主人公は五十才の、妻と離婚した独り身の男。彼の年老いた父との間の愛憎と、ある女性への愛とが平行して描かれるが、親子間の愛と、後者の性愛とを区別して欲しいものだ。濃密なフェロモンを発するダンス、タンゴによって触発された後者の愛は、取り違えよ…

ラストダンス

いっかなダンスのシーンは出てこないが、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を思わせるストーリー。この悲惨な女死刑囚に、ノーメイクでも美しいシャロン・ストーンの美貌が与えられては、何か居心地の悪さを感じずにこの映画を見ることができなかった。彼女に…

バーレスク

以前テレビで、クリスティーナ・アギレラのショーのあとシンディ・ローパーのコンサートがあるという番組編成があって、その順で見てみたのだが、後の方のシンディー、かつてパワフルな歌声で鳴らした彼女の歌が、アギレラの歌を聞いた後では (高齢というこ…

シベリア超特急

映画を愛する水野晴郎氏がついに自分で作ってしまった映画。製作はもとより、出演・監督・原作・脚本・主題歌の作詞まで自ら行った。低予算なのはまあいいとして、平凡な密室殺人物であることもいいとして、最後にストレートに反戦を訴えかけてくるところだ…

ブレスレス

ゴダール「勝手にしやがれ」(1959)のアレンジ版(ほとんどリメーク版)らしいが、1959年のパリでなら、無軌道な若者の生態は刺激的なものとして受容できたが、それをそのまま80年代のLAに持ってこられては、ただの「アホでマヌケなアメリカ人」(by マイケル・…

バイオハザード

導入部の登場人物からして早くも三流映画の臭いが紛々としているが、それも道理で、これらの人物はすべて後でゾンビになって登場してくるのであるから、ここに一流の俳優はハナから居ないわけである。オーラを発しない凡庸な役者たちだけからなる導入部は、…

トータル・フィアーズ

トム・クランシーのジャック・ライアン・シリーズはいずれも面白い映画に仕上がっている。「レッド・オクトーバーを追え」(1990)、「パトリオット・ゲーム」(1992)、「今そこにある危機(1994)」に続く4作目。 この映画への不満は一点、原子爆弾の爆発シーンを…

エネミー・ライン

ユーゴスラビア紛争は、まだついこの間の出来事である。それは歴史の中にしまいこむにはまだ早すぎる悲劇のはずだ。この映画は、あまりに近すぎて本来は神話化が不可能なその紛争を題材に、極力シンプルな原則をタテに、とりあえず神話化に成功してしまった…

愚か者の船

ホセ・ファーラー(ドイツのファシスト)やリー・マーヴィン(アメリカの好色漢)が嬉々として「愚か者」を演じているあたりは見ごたえがあるし、フラメンコ・ダンスという見せ場もある。だが149分のこの映画、あたかも船旅のように長く、そして船旅のように退屈…

彼女が消えた浜辺

言うのも愚かな事ながら、イラン人がごく普通の人間であることがいまさらのようにわかる映画。むしろそこらの日本人より、よほど開明的な人たちである。アメリカのプロパガンダなどに惑わされないように、こういう映画を良く見ておかなければならない。ただ…

パンチライン

レンタル・ビデオ店の棚を眺めていると、「パンチラ」という文字が目に入ったので、思わず目を近づけてみたら、「パンチライン」だった。しばらくは「パンチラ・イン」という風にしか読めずに、一体何のことかと考え込んだ(メイドが全員ミニスカートをはいて…

沈黙の裁き

劇場未公開のTV映画。中絶の是非を争う法廷劇で、IMdbを見ると、中絶について討議する良い教材になる映画とされている。中絶の適法化を求める女性に扮するホリー・ハンターは、ただでさえ「きっぱり」感のある女性だが、それが裁判劇に出てくれば、さらに「…

スパルタカス

なんと言っても最後のローマ軍との対決のシーンが一大スぺクタルで、物量的に凄い。ローマにおける閥族派と民衆派の闘い、その政治的駆け引きが描かれるが、これが紀元前の話だということに改めて驚かされる。日本の「邪馬台国」が三世紀であることを思うと…

アザーズ

「シックス・センス」(1999)で見事に一杯食わされていたのに、この映画でもまた鮮やかなその手口に見事に騙された。 この映画は、生に淫するあまり死の世界さえも生の隠喩で語ろうとする、人間の業のありかを思わせる。死後の永遠の世界という設定は、生への…

チェイシング/追跡

殺人に快楽を見出すサイコな青年と、かつてその青年の犯罪を目撃した、自殺願望の少女との物語。この青年の殺意が常に映画のどこかに存在しているという緊張感で最後まで見せるが、終わってみれば全体的には失敗している作だった。青年も少女もその人生の過…

コラテラル・ダメージ

テロで自分の妻子を殺された男が、報復のために単身コロンビアに乗り込む。この男にシュワルツネガーが扮すると、それもありかなという気にさせられるが、しかしこの男は一介の消防士という設定なので、やはり荒唐無稽な話としか言いようがない。一方、コラ…

アジャストメント

好きなSFものなので期待して見たが、P.K.ディック短編の映画化というこの作品、残念、あまり面白くなかった。人間の運命に介入するという異星人の調整官たちがあまりにもドジすぎる。それに必要とあらば人間の脳の改変も自在に出来るのに、主人公に対してだ…

デッドマン・ウォーキング

死刑という制度的報復殺人に関して、キリスト教文明の国と日本とでは考え方が違う。仏教的無常観では、死刑も無期懲役も(さらには一般の生存さえも)、死というものに対しては同価値のものに思える。この世ではただ業だけを受け、死ねば黄泉の国へ戻っていく…