2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

戦争と平和

風邪気味の中、これまでも何回か放映されているこの映画を見た。一度もまともに見たことがなかったし、今回もサワリだけ見ようと思っていたのに、見出すと結構面白く、3時間半のこの映画を最後まで見終わるという、病中の偉業を達成した。病気のときはいつ…

愛さえあれば

このタイトルとピアース・ブロスナンとの組み合わせでは、おのずと敬遠せざるを得ない映画だが、たまたま途中から見たら意外といい感触なのでそのまま見続けた。何と言ってもブロスナンが、得意のボンド風の二枚目風の世之介風ではなく、生の感情を出す演技…

裸足の伯爵夫人

古き良き時代、上品でエロティックな邦題があった時代の映画なのだが、ただしこの邦題は原題を忠実に翻訳したもの。 しかし見てみると、ハンフリー・ボガートは貧相だし、エヴァ・ガードナーも騒ぐほどの美人でもないし、性的フェロモンだけが売り物の若きロ…

夕陽のギャングたち

イタリア映画で、マカロニウェスタンかと思いきや、内容はかなり真面目な革命の物語で、それでいて日本語のタイトルはギャングたち、になっていて、ワケが分らない。2時間40分という長尺の映画で、冒頭のロッド・スタイガーの放尿のシーンとか、ジェーム…

ジュリア

何度か見る機会があった映画だが、未だかつてまともに見たことがなかった。今回、またまた見る機会があったわけだが、やはり映画の世界にうまくはいりこめなかった。レッドパージの際の、リリアンとダシール・ハメットの身の処し方は立派なのだろうが、ジュ…

L.A.コンフィデンシャル

これは面白い。バドだバズだエドだシドだ、と人物の名前がややこしくて、全体の陰謀のスキームがはっきりしなかったが、それでも面白い。刑事達の来ているさりげないツィードのジャケットに、昔映画に必ず感じていた物象のエロスを少し感じた。 欲望の支配す…

クライシス・オブ・アメリカ

他者の思考を支配する―他者の自由を根源的に奪う―洗脳という、考えられる限りの最先端の「悪」を扱っている映画だと思ったが、フランク・シナトラの「影なき狙撃者」(1962)のリメイクらしい。つまり軍隊と洗脳というテーマは朝鮮戦争時にすでにあったの…

シービスケット

しばらく映画館というものから遠ざかっていた時期があったが、近所にシネプレックスができたとき、実に数年ぶりかで映画館で見た映画がこれ。映画館で見る映画の、その大画面、大音響というものに感嘆これ久しうした、と言えばおおげさだけれど。 映画という…

幸せの隠れ場所

実話であるこの話に見るあまりにストレートな人間の善意というものに驚く。この善意は、やがてかの不良たちが白人夫婦を襲撃して彼等の生活を破壊してしまうことの可能性を排除できない。つまり無惨な悲劇になる可能性がある。現実はしかし人間の善意がうま…

死刑執行人もまた死す

ハイドリヒ暗殺事件を描いた映画「暁の七人」(1975)は、その暗殺作戦とやらがあまりにお粗末なので途中で見るのをやめてしまった。同じ事件を描いて一番古いこの映画は、すでに襲撃が終わったところから始まるが、「傑作」と言われるこの映画もやはり興味を…

カントリー・ストロング

三島由紀夫のスタンダール評「隙間だらけの完全さ」という言葉をふと思い出した。この映画も隙間だらけで、人物の愛憎関係が、ほとんど行きあったりばったりみたいに揺れ動いて一貫性がない。それでも定型のコード進行で流れ続けるカントリー・ミュージックに…

硝子の塔

この頃の(もう三十五歳、役と同じ年齢だが)シャロン・ストーンの美しさに瞠目。男優は大したことなし。ただマーティン・ランドーが翌年の「エド・ヴッド」(1994)で見せた怪演を想起して見るせいか、どうということの無い役だったが、なんとなく重厚な演技に…

ロストワールド/ジュラシック・パーク

いったいどんな要素がこの映画を、かくもつまらないものにしているのか、驚きあきれつつそんなことでも考えてみるしかないようなひどい出来の悪さだ。その点はさておいて、この映画における「悪役」インゲン社はいったい何を象徴しているのか。神をも恐れぬ…

華麗なるギャツビー

最後まで見ると、女性への夢に殉じて死んでいくギャツビーをグレートと形容する悲痛さが胸に迫ってくる。相手の女性がそれほど内実のない軽薄なデイジーであるから尚のこと。どうして翻訳小説から輸入映画まで、グレートを「華麗な」にしてしまうのだろう。…

現金に体を張れ

話を変にひねったりしていない、実にストレートなつくりの映画だが、犯罪映画のサスペンスは充分味わえる。競馬場の窓口係、バーテンダー、(それに警官も)、これらは実に割りにあわない仕事だ。この世のおこぼれに与っているだけの生活。一方、競馬業という…

嘆きの天使

これがドイツ最初のトーキー映画らしい。悪女によって滅びる世間知らずの男性の話。一見ラブコメデイー風に進行して行くが、最後になってようやく悲劇と分る。意外に太目の若いディートリッヒが、大したことのない唄を歌っている。原作はハインリヒ・マンら…

レスラー

なかなかフィジカルに見せる映画。 アメリカ人の孤独。夫婦関係も親子関係もまるですぐ切れてしまう糸のように頼りないものだし、職場での上下関係は仇同士のように非情だ。 レスラーたちの「ヤラセ」を否定するのは、大相撲の八百長に対する硬直した対応の…

北の宿から

都はるみがデビュー10年目に放った3曲目のミリオンセラーを元に、翌年作られた映画。都はるみはこの曲で日本歌謡大賞、日本レコード大賞、FNS歌謡祭最優秀グランプリなど17の賞を獲得、同年の紅白でトリの座をしとめて、歌謡界の頂点を極めた。 例に…

暗黒街の女

往年の二枚目俳優ロバート・テイラーを初めて見た。線の細い優男だが声が太いので、やはり宝田明などとは残念ながら一味違う。女優のシド・チャリシーは知らなかったが、後で見てみるとアステアやジーン・ケリーの相手を務めた有名なダンサーだった。道理で…

ステキな金縛り

いわゆる三谷節バリバリの映画だが、コメディーに対して「現実と接点のない話だ」などと不服を述べるのは筋違いだろうか。しかし裁判を題材にしたコメディーだからこそ、現実にいそうな人間をあたうかぎり完全に近づけた人間、つまり人文的な人間を一人は出…

Living out loud

「ライフ・イズ・ミュージック 私の生きる道」。何とまあスゴい邦題。勝手に英語のタイトル作りまくり、蛇足のサブタイトル付けまくり。その英語も井上陽水「愛は君」「love is you」のようにシュールなもの。原題のニュアンスを出せる何かいい日本語はない…

アンコ椿は恋の花/馬鹿っちょ出船

何気なく「涙の連絡船」を口ずさんだのは、悲しいことがあったからだろう。歌詞がうろ覚えだったのでついネットで聞いてみたのが大間違い、たちまち都はるみの歌のうまさに参ってしまい、懐かしさも手伝ってネットで聞けるだけの歌を聞いた。聞くほどにその…

恐怖のメロディー

元祖、「危険な情事」。1971年に「ストーカー」を扱ったというのはかなり先駆的。この手のスリラーは被害者側をあまりマヌケにしないことが作品の質に直結すると思われるが、予想通りあっさり殺されてしまう刑事はアホとしかいいようがないし、イーストウッ…

真田幸村の謀略

見るに堪えない映画。 見どころは襖絵などのセットの城内装飾と侍及び女御達の衣服の華美さ加減のみ。1979年の映画らしいが、真田十勇士の話を粋に映像美にまとめる力がすでに日本映画にない。俳優達にない。かって清水次郎長と次郎長一家を描く映画にはそれ…

サブマリン爆撃隊

あまりに古い映画で、ケチのつけようなし。 大富豪の御曹司、だが兵役を回避する気なしという奇特な男が、なぜか機関士という裏方に回り、なぜか幸運に誰のものでもない美女と遭遇して恋に陥るという話。昔のチャンバラ映画で、切られた人間が血も流さずに、…

家族の庭

小津安二郎的ショットで淡々とある夫婦とその周辺の人間が描かれる。小津なら原節子という美人が出てくるが、こちらは美人がまったく出てこない映画。映像美という映画の悦楽をもたらすのに美人を出すというのは最も手っ取り早い方法なのに。2010年 英国 マ…

アフリカの女王

この映画は、ハンフリー・ボガートがアカデミー主演男優賞を取って話題になったためか、昔テレビで何回か放映されたが、その度に面白いようなつまらないような感じで見ていた。あまりなじみのない異国の話であるだけに面白いことは面白いが、ヒーローは汚れ…

ホワイトハンター、ブラックハート

「アフリカの女王」撮影時のジョン・ヒューストン監督を描くのだから興味津々のはずなのだが、アフリカに行く辺りですでに眠くなってしまう。なぜ皆がこのわがままな監督に振り回されてしまうのだろうか。映画に出演したり出資したりする前に、監督の性格も…

孤独な場所で

ハンフリー・ボガートの、「カサブランカ」の後、「アフリカの女王」の前の作品。 ボガートは境界例的性格異常の脚本家に扮する。殺人の嫌疑をかけられて関係が破綻する一組の男女の悲劇を描くが、そもそもその嫌疑がなくとも衝動的で暴力志向の強い男のため…