2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

僕の国、パパの国

面白い。パキスタン人の父とイギリス人の母の間にいる七人の子供たち。父は子供たちをイスラム教徒として育てようと奮戦するが、マンチェスターの現代っ子たる子供たちが素直にそれに従うわけがない。当然そこにさまざまな諍い事が起こる。イスラム文化とイ…

コーンウォールの森へ

何だろう。いかにも良さそうな話なのだが、見終わると少しはぐらかされたような感じが残る。交通事故で頭を打ってすこし知能障害のある青年と、悪妻を殺し勤め先の銀行から大金を着服して逃亡している初老の男が主人公なので、見ていてヤキモキさせられる。…

ブロウ

伝説の麻薬ディーラー、ジョージ・ユングの生涯を描く。一時はアメリカのほとんどのコカインを仕切っていたというこの男の犯罪は、それがあまりにも淡々と描かれるため、それは彼の意志でも運命でもなく、ただそこにある状態、たまたまそこに投げ出されてあ…

リービング・ラスベガス

猥雑な性の世界と、それとは無縁の、性が脱色された愛の世界が一瞬交錯する。ヒモに虐待され搾取されながら、体を売る以外に生きる道を知らない十六歳の売春婦と、決して更正しようとしないアル中の男。暴力的なまでに挑発的な肉体と深い豊かな表情を合わせ…

スリーパーズ

少年院時代、自分達を陵辱した看守に対する少年たちの復讐の物語。 一番すっきりした復讐は、四人の仲間のうち、成人してヤクザになった方の二人組が、レストランで見かけた看守の一人を単純にその場で射殺する形に現れる。彼らはそのまま都会の闇に身を隠し…

アンカーウーマン その他

結局、人事権を持っている男は、その人事権で支配している女と寝てしまう。不幸にしてその人事権者に魅力が欠けていたらそれはセクハラになるが、男が魅力的なら情事になるだけ。だから誰もロバート・レッドフォードの所業に異を立てずに、ラヴ・ロマンスとし…

イル・ポスティーノ

詩人=煽動家たらざるを得ない悲劇。自由・生命の美を謳う詩に感化されて、政治活動(それは貧困と支配を脱するためのささやかな集会だったが)に身を投じ死んでしまう、イタリアの貧しい臨時郵便配達人マリオ。片や、その「煽動者」、ノーベル賞候補にも擬せら…

月光の夏

この映画は見る機会を得ることが出来ず、小説の方で読んだ。特攻隊員が出撃を前にして小学校を訪れ、今生の別れに学校のピアノで「月光」を弾いたという話。小説はドキュメンタリー仕立てにして、その特攻隊員を探し当てる過程を描く、というものにしている…

神童

原作は”さそうあきら”のマンガである由。この原作はまだ見る機会がないが、同じマンガでも「ピアノの森」は少しだけ読んだ。こちらは「文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞」を受けたとのことで世評は高いようだが、私は全く受付けなかった。だいたい森の中…

楽聖ショパン

体裁上は正統的なショパンの伝記映画。しかしてその内容は事実と違う点が沢山あるようだ。それに楽聖、と言えば普通はベートーヴェンで、ショパンはむしろ「ピアノの詩人」と呼ぶべき。ショパンに優雅にも扮したコーネル・ワイルド、彼が後年、町山智浩氏言…

陽のあたる教室

まさに「感動作」として紹介されざるを得ない映画であり、悪く言えば「お涙頂戴もの」なのだが、ジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」が歌われる映画を、とても貶す気になれない。それに「コンペティション」(1980)の再来か、リチャード・ドレイファス…

旅立ちの時

リバー・フェニックスがピアニストを目指す少年に扮する映画だが、彼は家にピアノが無いので紙の鍵盤で練習している。実際に音が出るロール・ピアノならともかく、文字通りただの鍵盤が書いてある紙なので、あれで練習になるのかなと思ったことだった。漸く音…

トイレット

日本映画といえるかどうか微妙なこの映画で、ピアノの演奏シーンがあったのはめっけもの。引きこもりの青年ピアニストが出てきて、その演奏が結構見せた。曲目も素敵。なにしろ、有名ではないが名曲という視点で選んだ曲なのだから。 ○ため息(フランツ・リ…

ピアノを弾く大統領

ロマンチック・ラブ・コメデイーだから仕方がないが、大統領が弾いてみせる楽曲がポピュラー・ソングだったのが物足りない。大統領に扮したアン・ソンギ、かなりピアノ練習はしたらしいが、ピアノが趣味と公言しながら実はピアノは下手、という設定なのでラクで…

戦場のピアニスト (3)

この映画のサントラ盤のCDの解説に、すこし気になることが書かれていた。それはシュピルマンがバラード1番を弾いた廃墟の場面で、多分ホーゼンフェルト大尉が弾いているという設定になっているベートーヴェンの「月光」が流れて来たときに、なんともいえな…

コンペティション

ホロヴィッツ曰く「世界のピアニストには三種類しかない。ユダヤ人とホモと下手糞だ」。また「大先生中の先生」レシェティツキーがピアニストが大成するための三つの条件として曰く、「とにかく子供の頃から『天才』として騒がれていたこと、スラブ系の血を…

四日間の奇蹟

サヴァン症候群であるとか落雷で人間の魂が入れ替わるとか、さまざまな仕掛けが取り込まれているが、蓮實重彦に言わせたら、「メロドラマ」「紋切型」「とうに始まっている物語」「退屈な反復」などという言葉が百万遍も出てきそうな映画だ。ピアノ映画とし…

恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ

ながらく「無冠の名優」とされていたジェフ・ブリッジスもようやく「クレイジー・ハート」でオスカーを獲った。彼の出演作は多いが、この「ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」がジェフにとって最良、最適の役柄のように思える。ミュージシャンでもある本領を…

ピアノ・レッスン

西洋文明の粋であるピアノとともに、一人の西洋女性をマオリ族に差し出す、という変種のオリエンタリズム映画。この女性には聴唖という聖痕があったが、さらに指の切断という供犠もつけ加えられる。映像美もあり、音楽も素晴らしいが、この供犠のシーンがあ…

ピアニストを撃て

映画中、未見の有名映画なので、楽しみにしていたが、全くどうということのない映画だった。演奏シーンが大したことないし、話自体もなんやそれというもの。 紹介記事に「傑作サスペンス」「小気味良いテンポ」とあるが、いったいどこが、だ。映像的にも別に…

秋のソナタ

ソナタと言いつつ、実際に出てくるのは前奏曲(プレリュード)ではないか。また俗受けを狙った邦題をつけおって、と思ったが、原題もちゃんとHöstsonaten(Autumn Sonata)でした。どうも邦題にケチをつける癖がついてしまったらしい。すみません。ちなみに「善…

愛情物語

タイロン・パワーのすごいピアノ演奏(の演技)が楽しめる映画。一方、二枚目俳優というパワーの自負が禍いして、恩人でもあるキム・ノヴァクとの愛が通り一編にしか伝わってこない映画でもある。邦題「愛情物語」の愛情とは、キムヘの愛ではなく、息子への屈折…

僕のピアノコンチェルト

自らの天賦の才を重荷に感じて、その才を隠し凡人を装う少年、という極めて贅沢な話。親や周囲の人間の期待という重圧に苦しむあまり心に傷を負う子供、という映画はままあるが、これはその対極にある物語だ。子供のほうが一枚も二枚も上手なのだ。少年の天…

私の小さなピアニスト

絶対音感を有する少年キョンミンに扮した子役シン・ウィジエの、ちょっとこまっしゃくれた容貌が災いして、この映画への感情移入は不調に終わった。その容貌だけではない。キョンミンは交通事故で母を失くした問題児という設定で、そのキョンミンから母のよ…

海の上のピアニスト

最近、「感動作」として紹介される映画をときたま見かけるが、「感動作」などという映画のジャンルがありえるのか。このような紹介は逆に、観客が感動というものに偶然に幸福に出会うことを阻害するだけのように思われるが。むしろ「感動作」と言われたら、…

真夜中のピアニスト

これも世評は高い映画(ベルリン映画祭銀熊賞)だが、好きになれなかった。 この男、なぜビアニストたらんとするのか。そしてなぜ周囲の人間が、28歳にもなったこの男にデビューのチャンスを与えようとするのか。彼はそれなりにピアノ・レッスンに励みはするけ…

4分間のピアニスト

世評はそれなりに高い映画ではあるが、話も暗く、画面も暗く、ドイツ映画なのにフランス映画なみにエグいこの映画に、私は感動し損ねてしまった。獄中でピアノを教える老女も教わる方の女受刑囚も、そろいもそろって自ら不幸を呼び寄せてしまうような人間で…

シャイン

なかなか見せる映画だ。ナチスの迫害をのがれオーストラリアに亡命してきた、ポーランド系ユダヤ人の一家。息子のデヴィッド・へルフゴッドは、父親の夢を託され家庭でピアノの英才教育を受ける。この偏屈で頑迷な父親がすべての悲劇の根源なのだが、彼は息子…

誘う女

全くの駄作。素直に時系列でストーリーを追っていけば、野心多き悪女の悲劇にもなるところを、下手に関係者のインタビューで構成するみたいなことをしているから台無し。実話に取材した小説の映画化とはいえ、もう少しやりようがあるのではないか。 テレビに…

プリンス 英国王室もうひとつの秘密

英王室を描く映画は枚挙に暇がないが、「英国王のスピーチ」に名前だけ出てきた、ジョン王子を描いた映画もある。BBC放送のテレビドラマではあるが、それがこの「プリンス 英国王室 もう一つの秘密」。 ジョージ六世の吃音の原因として、父王ジョージ五世の…