2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

華麗なる相続人

豪華な出演陣(ジェームス・メイスン、モーリス・ロネ、ロミー・シュナイダー、ゲルト・フレーベ、オマー・シャリフ、イレーネ・パパス)であるのに、どうしたことか全く面白くない。オードリーは危惧したほどふけておらず十分美しく良かったが、相方が「いな…

じゃじゃ馬ならし

「いそしぎ」という物語があまりにも急速に無効化したことに驚いたが、同じバートン・リズ夫婦の映画でも、シェークスピアの戯曲ならそれほど急速には古びないだろう、という期待があった。しかしこちらの話も、そもそもが、という美徳を女性に求めるという話な…

キッズ・リターン

そこそこに見せる映画。 先生たちから何の同情もなく心底バカと思われている落ちこぼれ高校生の話。高校生は高校生で「先公」たちを何の同情もなく心底バカと思っている。一種の不条理劇の構成を取っているが、なるほど「先公」たちはただ進学率にしか興味が…

いそしぎ

驚くべきことに往年の名画の一つと言われるこの映画にほとんど何も感じることが出来なかった。脚本が「ローマの休日」のドルトン・トランボ( ! )であるにもかかわらず。絶世の美女と言ってもエリザベス・テイラーはすでに擦り切れているし、話自体も極めて凡…

プレイス・イン・ザ・ハート

池波正太郎も愛した名作。人間の傲慢と誠実、冷酷と慈愛、卑小と偉大、全部ある。 女の底力のすごさ、ジリ貧の道を選ばず、窮状を打破しようと大胆にリスク・テイキングをする。家族と土地を守るために、綿花の一番摘みにイチかバチか挑戦する。メル・ギブソ…

若き日のリンカーン

恐ろしく若いヘンリー・フォンダが出ていて、声やしゃべりかたはフォンダなのだが、顔がどう見ても本人に見えない。あまりアップのない撮影法なのでしかと確かめようがなく、リンカーンに似せたメイクなのかそれとも地顔なのか、判別しない。なにしろ目尻に皺…

天空の草原のナンサ

登場人物が実際のモンゴル遊牧民の家族だとは驚きだ。ドイツ映画であることも驚きだったが、監督はモンゴル出身で在ミュンヘンの女性である。長女ナンサを始め三人の子供たちがとても可愛くとても自然である。小さなナンサが馬に乗って羊を追い、道に迷って…

ケース39 招かれざる少女

最初はサイコ系の映画かと思ったが、少女の家の壁に磔刑の十字架が麗々しく飾られてあるのを見て、「悪魔」ものだと見当がつく。見てみるとやはりその通りだった。しかしこの悪魔、最後にあっさり水死してしまうなんて悪魔の風上にも置けない奴だ。当初は少…

ザ・ロード

何かは知らぬが地球的規模の大災害の後の地上を描くので基本的に映像美はない。大災害の前の世界が少しは出てくるが、そこでも、去って行った妻を愛惜の念を高める為にわざと愛らしく描いたりしない節度があるのと同様、世界はことさらに美しく描かれたりし…

ロング・ライダーズ

南北戦争後、銀行強盗になったジェシー・ジェームス兄弟とその周辺を描く映画。兄弟が沢山出てくるが、その兄弟役にどうやらすべて本物の兄弟役者を配したらしい。そのような配役をしてくれなければ、あのランディ・クエイドがデニス・クエイドの実の兄だなど…

プリティ・リーグ

ランジェリー・フットボールの如きキワモノかと思ったが、意外や意外、これが「感動作」だった。冒頭の音楽で、いい映画の予感が既にし、それがマドンナが唄う主題歌だった。登場するアメリカン・ガールたちはいずれも手に負えないガキどもに過ぎないし、愛…

デイブレイカー

イーサン・ホークも出ているし、同じヴァンパイヤものでも少し毛色が違うかも知れないと思って見てみたが、結局、ただのヴァンパイヤものだった。欧米人はなぜこの吸血鬼を偏愛するのだろうか。まるで独参湯であるかのように繰り返し呼び出される物語。血に…

ノーウェア・ボーイ ひとりぼっちのあいつ

先に楽曲「nowhere boy」の方に「ひとりぼっちのあいつ」と余計な副タイトルがつけられてしまっていたから仕方がないが、ジョン・レノンの伝記となると、「ひとりぼっちのあいつ」ではしっくりこない。母親の家とミミ叔母さんの家と学校と、どこにも所属でき…

メトロポリス

1927年、ナチス台頭前夜のワイマール共和国で作成されたサイレント映画。時代を2026年に設定し、労使分裂した絶望的な未来社会を描くSF。地上で安逸にすごす資本家と、地下生活を強いられる労働者、というように資本家対労働者の対比は図式的だが、映像はす…

人生万歳 !

ウッディ・アレンらしい融通無碍の映画。登場人物たる、偏屈な物理学者ボリスの弁、「キリストもマルクスも素晴らしい、しかし彼らは、人間はみな善人であるという間違った前提に立っている」いかにも、その通り。 以下、映画には関係ないけど、共産主義中国…

暁の七人

ナチスのユダヤ人および少数民族の絶滅政策(最終的解決)の遂行者であった「金髪の獣」ハイドリヒ将軍の暗殺計画、エンスラポイド(類人猿)作戦を描いた映画。チェコ総督となっていたハイドリヒを、イギリス軍の支援を受けた、亡命チェコ政府の精鋭部隊が襲う…

シカゴ (2002年)

この映画で、実に押し出しのいいリチャード・ギアを見て以来、遅まきながら彼が好きになった。それまでは、ただ線の細い二枚目もどきだとしか思っていなかったのだけれど。アメリカ在住の知人で、生の映画スターを数多く見ている人が、「二枚目らしい二枚目…

シカゴ

1871年のシカゴ大火を背景にした映画だが、その火事のシーンや防火のためのビル爆破のシーンなどはなかなか大掛かりなもので、堂々、これは大作の部類に入る映画だ。23歳のタイロン・パワーの、まだ暑苦しくなる前のさわやかな美顔が見られる。その彼が踊子…

霧の中の風景

ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞、らしいが、この思わせぶりなストーリー展開の遅さ、間の開き加減には閉口する。「子供が寝付かないで困るときはアンゲロプロスを見せろ」と言うことわざがギリシャにあるらしいが、もっともである。子供に限らず、大人にも…

ジャーロ

タイトルには「黄色」という意味の他に、「猟奇スリラー」という意味もあるらしい。猟奇ものを見ておいてこういう文句を言うのもなんだが、唇を切り取ったり指を切り取ったりするシーンは、平常人ならまともに見れないものだ。しかし、こういうジャーロ映画…

シャッター・アイランド

あるとき、忽然と人が消える。あるとき、突然、知人にシカトされる。あるとき、周りの人間が、わけの分らない事を言い出す。この手の理不尽な世界の解釈方法、 ①すべてが登場人物の幻想ないし狂気 ②登場人物はすべてすでに死んでいる ③背後に地球を支配して…

グッドナイト・ムーン

一億男女が性的に放恣になり、男は総ヘンリー八世化、女は総Sex and the City化している中で、一方の子供たちは、未だに旧来の愛の物語を与えられ、両親という男女間の愛の永続に、自分の生存の根拠を求め続けている。この、親と子の双方の価値観の時間差が…

わたしを離さないで

カズオ・イシグロの原作小説が書かれた2005年に、映画「アイランド」が製作されている。双方とも臓器提供用に作られたクローン人間を扱った物語だ。「アイランド」では最後に、真相を知ったクローンたちが反乱を起して逃亡する。2010年の映画「わたしを離さな…

七つの贈り物

話の「つくり」が少し凝りすぎのような感。このように一方的に生を贈られても、贈られたほうはただ自分の生の無意味さに怯えるばかりだ。生の意味は、死の形ですべて男が持っていってしまったようなものだから。2008年 米 ガブリエレ・ムッチーノ

96時間

誘拐される娘役が十人並の容貌なのが重大な欠点。全ての父親から見える全ての娘を表すわけだから、飛び切りチャーミングな女性でなければならないのに。俳優の格で、すぐ死んでしまう役かそうでないか、大体見当がつくが、もしかしたら救出できなかったとい…

モンテーニュ通りのカフェ

坦々と、淡々と、予定調和に向かって進んでいく物語。この映画に出てくるピアニストはちょっといただけなかった。ピアニストが演奏中礼服を着るというしきたりに逆らうのはいいけれど、それはとっくに認められていて、結構ラフなスタイルで弾いている人もい…

遥か群衆を離れて

骨董的に古い映画。文豪トーマス・ハーディーの原作だって ? これは一体何か。これが文芸大作というものか。愛というものを探求するという名目で、じつは愛を迂回してみせ、じらすだけじらし、最後に読者が望むカタルシスを与える。ただのハーレークィン・ロ…

ベンジャミン・バトン

B.ピットは有数の美男の一人にカウントされているらしいが、どこから見ても十人並で、それほど傑出した美男だとは思えない。しかしケイト・ブランシェットの美貌を見るだけでも一見の価値ある映画。フィッツジェラルドの原作だという話の意図がよくわからな…

ジュノ

旧来の性的幻想がすべて消滅したあと残るのはこのようなあっけらかんとした性交と妊娠。しかし養子制度が確立しているアメリカなので辛うじて悲劇にはならずにすむ。それどころかほって置いてもやっぱり愛らしきものは生まれてくるのだ。つまり恋愛のどんな…

チェンジリング

絶句。脱力。 人間の悲惨さの原因、①愛というフレームと、破壊/快楽というフレームが隣接して並存していること。②物理的衝撃に人間の身体があまりに無防備であること。③正しさを自らでは決定できないという人間の基本的条件のもとで、暴力が一時的に正しさ…