2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

2012

この手のSFパニック・ディザスター・ムービーは私の大好物であるが、「インデペンデンス・デイ」(1996)「ディープ・インパクト」「アルマゲドン」(1998)、「デイ・アフター・トゥモロー」(2004)「ハプニング」(2008)「ノウイング」(2009)と次第に特撮に手が…

ヘラクレス

アメリカでは、映画における光学というものがかなり早くに確立していた。白人種がいちばん美しく映る撮影法について、例えばフィルムの質から、光源と露出の設定から、現像のやり方にいたるまでノウハウとして確立させた。このノウハウから意識的な逸脱を図…

クロッシング・ガード

ジャック・ニコルソンが「恋愛小説家」で第70回アカデミーの主演男優賞に選ばれた日に、たまたまこの映画を見たので、冗長というしかないこの凡庸な映画を最後まで見てしまった。ちなみに1997年度のこの回は、「タイタニック」が11部門を取り、アカデミー賞…

トーク・レディオ

ラジオでなくてレディオである。Diという音は既に日本語に侵入しているのだ。のみならずaeという音さえも。そんな話でお茶を濁したいほど、この映画の語りかけるテーマは暗く、絶望的である。原作者のエリック・ボゴジアンが自ら主演している。監督はオリヴ…

エデンの東

最近は「エデンの東」と言えば韓国のドラマが思い出されるらしい。こちらもスタインベックの小説が原作らしいが、韓国ではキリスト教がカルト化しているためかどうか、なんだか原作以上におどろおどろしい話になっているらしい。韓国映画はブームの当初こそ…

水戸黄門海を渡る

テレビの水戸黄門の製作が中止になるという。これだけのロングセラーの番組も時の流れには逆らえない。現在の里見浩太郎はテレビシリーズでは8作目、2002年から実に9年間も続いている。ほぼ14年間続いた東野栄治郎のものに次ぎ、西村晃に並ぶ記録だ。映画も…

ローマの奇跡

病気が治ったり死人が生き返ったりする、キリスト教的な奇跡に私は弱い。そのような奇跡を希求してやまない、人間の不幸な生存の条件に身をつまされてしまう。「俺たちは天使じゃない」で、水没したマリア像が溺れかかった人間を(木像のその浮力で)救うシー…

血まみれギャングママ

1930年代の実在のギャング団、バーカー一家を材としたもの。なぜこんなまるまるバカな胸が悪くなるような家族の話を映画にしたのかといぶかったが、「俺たちに明日はない」(1967)の二匹目のどぜうを狙ってB級映画の帝王、ロジャー・コーマンが作ったものらし…

勇気あるもの

この映画を見た後は確実に猛烈に「ハムレット」が読みたくなる。新米の臨時教師が、落ちこぼれの合衆国陸軍兵士達に、「考えること」を教えるために、やむなくシェイクスピアの講義を始めだすという筋立ての中で、その教師の「教え」ようとする素人的な手つ…

若者のすべて

これなども見るべき時期を逸してしまった映画で、三時間という長尺のこの映画を苦痛を感ずることなく見ることができるのは、青春という感性豊かな時代においてでしかないだろうと思う。すでに若者ではなく、「いまどきの若者は―」というほど若者に関心もない…

金環蝕

全く感興が湧かなかった映画だった。 ①セリフが聞き取りにくい。 ②映像が汚い。 ③共感できる人物なし。 35ミリの小さな画面が象徴しているような、日本の世知辛さ、ショボさ。悪人のことごとくが一面的で、単純でこすからく、かのジョン・ル・カレ描くスマイ…

男の出発

「出発」は「たびだち」と読ませる。往年のフォークソングなどで愛用された、なんとなく恥ずかしくなるような語法だ。衛星放送で録画したものを見たのだが、録画しながら最後のほうだけちらと見たら、西部劇としてはパンチのない映画のように思えた。それで…

アウトブレイク/エピデミック

アウトブレイク」(O)は、人倫の破壊につながる盲目的な軍事意志と、その意志に反抗する人間の良心との対決という図式によって作成された娯楽映画である。 「エピデミック」(E)にはそのような透視できる内部構造が見出せない。細菌によって破壊された生体組織…

マイライフ・アズ・ア・ドッグ

みすぼらしい最低の生活という意味合いの「犬の生活」に、人工衛星に載せられたライカ犬の運命と自らの飼い犬の運命を含ませているのが原タイトル(Mitt liv som hund)なのだろうと思う。タイトル翻案担当者はスェーデン語のそれをわざわざ英語に変え、それを…

セントアンナの奇跡

終ってみれば二時間半にもなる冗長な映画だった。往年のリアリズム映画の時代には、そのかもしだす異国情緒で心をときめかしたこともあるイタリア語の響きが、なんとなく重苦しい。その重苦しい音韻とともに、村民虐殺という戦争犯罪を突きつけられれば観客…

パリは霧にぬれて

現代の高度に発達した産業社会の緊張によって生み出される不安と恐怖に苛まれ疲弊する現代人の心理状態を描出するサスペンス・ドラマ、ということらしいが、さっぱり面白くない。ただ、かのニクソンに扮した性格俳優フランク・ランジェラの若き姿が見られる…

あの夏の子供たち

これはいわゆる「泣ける」映画というものらしいが、子供たちである三人の姉妹のスリムな肢体に新鮮なものを感じるくらいがとりえの映画で、泣けるというものではない。私は、泣ける映画というものに、あまり価値を置かないのでしょうがないが、それより自殺…

ケイン号の叛乱

ハンフリー・ボガートってなんで「カサブランカ」の主役になれたんだ。どう見ても風采の上がらないただのおっさんだし、役柄がこんな嫌われる上官の役では、なおさら貧相さが目についてしまうだけだ。などと思ったりしていたので、最初に見たときは途中から…

ホースメン

十字架で惨殺された人間の死体を崇めるおどろおどろしい宗教、耶蘇教の怪異性ここにきわまれり。愛の宗教ならぬ、憎悪の一神教、キリスト教の病的な想像力が生んだ酷薄無残な話。親から虐待を受けた人間がネットで組織をつくり、親たちに復讐していくという…

ウィンド・トーカーズ

これは「プライベート・ライアン」(1998)と同様、戦闘というもののリアルさを、まるで旧来の映画とは別の次元まで押し上げて見せた戦争映画だが、アメリカ対ドイツの場合、スッゴーイとか言って見ていたその戦闘シーンも、サイパン島の戦い、すなわちアメリ…

夜霧よ今夜もありがとう

往年の日活映画のパセティックな魅力が、もしかしたら味わえるかと少し期待したが全然ダメだった。日活がすでに経営が左前になり、ロマンポルノ路線に転じる直前の映画だから仕方がない。作品解説に「カサブランカ」を大胆にアレンジして、とあるが、それっ…

パール・ハーバー

この映画を、他のハリウッド恋愛映画同様に楽しんで見れる人がいわゆる戦無派ということになるのだろうか。私は戦中派ではないが、決してこの映画を平静には見れないという点では、十分に戦後派である。チャラチャラした恋愛を他ならぬ日本の悲劇たる「太平…

次郎長三国志

待てば文庫の日和あり(ハードカバーの新著は高いし嵩張るしで、なかなか買えないが、待っていればいずれ文庫になること)。 待てば衛星放送の日和あり(DVDは高いので、中古でもないかぎりなかなか買えないが、待っていれば衛星の名画劇場でやってくれること)…

シンドラーのリスト

思ったとおり、この映画を見終わってもうまく感動できなかった。ラスト近くで「もっと救うことができた」と泣き崩れるシンドラーと、商売のためにドイツ兵の歓心を買うことに専念し、一方で複数の女たちとよろしくやっているシンドラーと、どちらが「本当の…

ライフ・イズ・ビューティフル/裸で狼の群れの中に

アカデミー賞を賑わした「感動作」、「ライフ・イズ・ビューティフル」、この映画の謳いあげる人間性の勝利というテーマに酔い痴れるには、私はあまりに多く戦争の惨事を知りすぎていた。収容所に送られた少年が奇跡的に生還するという話を聞かされても、あ…

我が教え子、ヒットラー

これがドイツで作られた映画であることが信じられない。つまりはナチス犯罪の無害化、脱色化である。「ライフ・イズ・ビューティフル」に勝るとも劣らぬ、欺瞞による人間悪の無害化だ。制作者たちはどのような心理でハーケンクロイツに席巻されたドイツの町…

未来世紀ブラジル

世界が曲がりくねったダクトパイプと張り巡らされたコードにびっしりと絡みつかれたとき、必要な政治的選択は人間の管理の強化だ。管理の中心である情報省のその長官はエリート職であり、専用のエレベーターと凶暴な衛兵があてがわれている。身分証明書だけ…

美しき運命の傷痕

「地獄」という原題に、かくも凝った邦題が与えられた。この映画の制作に関与した日本の当然の権利の行使であるかのように。しかし、見終わってみると原題がいかにもふさわしい映画で、「美」も「運命」も「傷痕」もただの日本人好みの、修飾的な空疎な言葉…

ミスティック・リバー

第二の「スタンド・バイ・ミー」、とかなんとかいうキャッチは誰がつけたのか。件の映画とこの映画とは何の共通点もない。それどころか少年時代の「友情」というものの扱いでは、ほとんど正反対である。それに涙が何とかかんとか、とポスターに書いてあった…

スタンド・バイ・ミー

スティーブン・キングの短編「死体」を原作とする映画。キングの小説は概して読みやすい。これは訳者に恵まれた結果なのか、原文自体が読みやすいものなのか私には分らない。読みやすいが文章の質は決して軽くない。一定の重量を持つ内実を有する文章ではあ…