アイリス

 つらいつらい、ひたすらつらい映画。ヒロインの若き時代の奔放な性の、愛に対する残酷もつらいし、その彼女が老年となってアルツハイマーを患うというのもこれまた当然のことながらつらい。あまりにつらすぎるので、それが「下半身のムズムズ」(by サルトル)である性の快楽の代償だとするといかにも割に合わない思いがする。しかしその性の快楽は、若きケイト・ウィンスレットの肉体という美の分与に与ることであり、その代償と考えれば、その分与がまったくなかった生の空虚さを考えれば、やむをえないつらさなのだとあきらめるしかない。Pay the price。 生とは「無意味な受難」である、とサルトルは言った。

2001年 イギリス リチャード・エア