正義のゆくえ I.C.E特別捜査官

 移民・関税執行局(ICE-Immigration and Customs Enforcement)。グリーン・カードが欲しいという弱みにつけこまれて認定官に体を弄ばれる役どころの、Alice Eveという女優、役どころからして美人女優と認定されているのだろうが、その肢体はともかく容貌は美人かどうかは実に微妙なところ。美人でない美人女優という点ではロビン・ライト・ペンといい勝負。全く美を感じなかった自分の感覚の、世間からのズレ具合を心配したほどだ。確かに一種整ってはいる顔だが、同時にむき出しでもありすぎる顔。
 アメリカの永住権をめぐる様々な悲喜劇を見せられるが、アメリカという国は不法に越境してでも移住すべき価値のある国なのか。隣国メキシコからのcrossing overは分るとしても、オーストラリア、韓国からという場合でも今やそれだけの価値があるのだろうか。自由の国 ? 機会の国 ? そんな神話が今でも生きているのか。現実は9.11事件に関して肯定的作文を書いたイラク人女学生がたちまちFBIに目をつけられるというのがアメリカだ。この映画から良心的な捜査官マックス(ハリソン・フォード)を差し引いたものが現実のアメリカに近いだろう。逃れ行くべき国がアメリカしかない、という我々に与えられた圧倒的不幸が胸に迫る。

2009年 米 ウェイン・クラマー