ザ・バンク 堕ちた巨像

 どうして邦題にはこういう説明的なものが多いのだろう。余韻に美を求める俳句民族の末裔とは思えないこのセンス。
 国際金融業界の実態を知るのに何の役にも立たない映画。そもそもがマネー・ロンダリングというケチな犯罪に手を染めて告発されたBCCI事件がモデルだから仕方がないが、本当の金融資本はそんなケチな犯罪はしないだろう。真相を知った人間を事もあろうに美術館という公共施設内で、機関銃で撃ち殺そうとするような野暮ったいこともしないだろう。彼等の犯罪はもっと巧妙でもっと洗練されていてもっと大規模なものなのだ。
 それにしても金融というものの謀略的性格を知る端緒に触れながら、それを単に勧善懲悪のアクション映画にしてしまうところに救いがたい大衆性があり、「銀行を悪役にするなんて、意外性がありました」だの「銃撃戦の場面には痺れました」などというノーテンキな観客を生むだけに終っている。米・英・独と三カ国共同制作らしいが、一体何をやっているのか。

2009年 米・英・独 トム・ティクヴァ