コールドマウンテン

 南北戦争周辺の挿話として語られる、義侠団という半ば私的な警察組織の暴虐。アメリカ史の暗黒がかくて続々と露呈される。最後は一応ハッピーエンドだが、「ミッシング」を見た時同様、だからどうなんだと思わされるだけ。人生からたったこれっぽっちの「ハッピー」を盗み取るために、これほどの「アンハッピー」が必要だとは。そのアンバランスぶりに観客としては立腹しても良いようなものだ。歴史と人生の実相を勉強するためには有益な映画だが、ニコル・キッドマンとレニー・ゼルウィガーが出ているのに、歴史の悲惨に押しつぶされて、何の悦楽も感じるヒマのない映画である。

2003年 米 アンソニー・ミンゲラ