再会の食卓

 とても感触の良い映画だけれど、そもそも四十年間ともに暮らしたという生活の事実性を捨てて、大昔一年間だけ過ごして離ればなれになってしまった男の元にいまさら行こうとする女性の心事が理解不能で、共感できない。残りの人生は愛のために生きたい、ってその「愛」って一体何のことだ。ともに暮らした子供たちや孫たちより大事なものか。台湾の現地妻が死んだ後、自分の元妻を台湾に連れて行こうとする男の方にももちろん共感できない。大体七十にもなんなんとする男が、略奪としか云いようがないことをするか。そんなことをするヒマがあったら、まだ一人前の大人になりきれていない自分の長男の心配でもすれば、と言いたくなる。昔の夫のもとに行こうとする老妻に理解を示すのみか、その男を歓待までする現夫の老人のみ共感可能、というかその寛容さは素晴らしい。上海という都市の不動産事情や国共軍関係者の戦後の不遇や文革批判などが、比較的自由に映画の中で語られているので、映画を通してみたこの中国をこそ信頼したくなる。そしてそれは、この現夫のような寛容な人間が生きている中国に対する信頼で、一足先に「開明」化した台湾から愛などという「自分大事」の観念を持ち込まれ、またその観念にあっさり感染していくような中国はむしろ信頼するに足りない。

2010年 中国 ワン・チュアンアン