グッドモーニング・プレジデント

 戯画的に軽薄な人間にされた日本の大使が、韓国の青年大統領(チャン・ドンゴン)に呼びつけられ怒鳴りつけられるシーンに、おおかたの韓国の観客は快哉を叫んだに違いない。この映画では、竹島を巡って挑発行為をしているのは当然韓国側ではなく日本側である。そして韓国は、北朝鮮と日本との間に戦争が起きないように、粒々辛苦、苦心している良心的な国なのだ。それらは政治的イシューだから、自国の立場で語られる、ということはいたし方がない。しかし日本を、平然と「いつかは滅びる島国」と呼ぶにいたってはどうか。こういう映画なのに映画番組のホスト(もちろん日本人)の二人は、いい年をした大人のはずだが、キッチンの場面がいいですねー、などと言い、こういう政治家を扱った映画は日本ではできませんね、などと言っている。できないのはあたり前だ。他国の大使を茶化して見せるような映画は、日本ならどこかでストップがかかる。それは他国への遠慮というものではなく良識というものだ。映画を見せるのが商売とはいえ、ホストの二人が他の映画を紹介するのと全く同じような口調で、この偏向映画を紹介するのに唖然とした。韓流などというもの乗せられて、下地が作られているとはいえ、こんな映画まで売り込まれているのか。韓国は、日本の軍備拡張を心配するヒマがあったら中国のそれを心配すべきだし、アメリカの介入を抑えたなどと虚構の中で自画自賛するヒマがあったら、現実の失策、米韓FTAの撤回を考えた方が良いと思うが。しかし、仮に日本で橋下や石原などの「青年」首相が誕生するような事態になったら、彼等が、このチャン・ドンゴン扮した大統領のように、自国人に受けるような颯爽とした言動をすれば、それは韓国人の感情を逆撫でするものになるのは当然だから、虚構の中でやっている韓国のほうがまだまし、ということになるか。

2009年 韓国 チャン・ジン