ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女

 ナチスを端的に怪物扱いし、ナチの父親に殺人と強姦を仕込まれた息子が、大量殺人者になる、という話を機軸にしている。その父は娘を犯し、その兄にも妹を犯させる、というのだからおぞましい。ドラゴン・タトゥーの女もそれとは別に自分の父親に虐待され、おそらく強姦されている(これは第2部を見ると、父はロシアから亡命した高官で、ただ母を虐待侮辱しただけ、ということになっていた)。彼女はその父を殺し、収監されるが、その後保護司からも、強姦される、というのだからおぞましさのオン・パレード。
 2011年、ハリウッドでダニエル・クレイグ主演でリメイクされたが、よくよく人間というものはこういうおぞましさが好きなものらしい。というより、あたかも祭儀における供犠のようにこの種の話というものは、暮らしを穏やかで平和なものにするために必要とされているのだ。それを一応映像美というものも考慮して提供してくれるのだから、ありがたく感謝すべきである。

2009年 スウェーデン ニールス・アルデン・オプレヴ