マグダレンの祈り

 修道院というより、「ふしだらな」女性を収容する少年院のような機能を果たした、ダブリンのマグダレン修道院。性道徳というものに対して極めてニュートラルな原女性ともいうべき院生たち。彼女たちを支配するシスターが性的に潔癖である一方、神父の方は院生に淫行を働く。これは性を厳格に統御する教義を持ちつつ、特権者にはその例外が認められているという、役人の利権の構造にも通底する、「まいどおなじみの」宗教というものの最も端的な構図だ。単に一修道院の悪行が暴かれるにとどまらず、神の名において人心を篭絡、支配するキリスト教(および宗教一般)の野蛮さに目を開かされる映画である。惨殺された人間の無残な死体を崇め奉るキリスト教はとくに不気味というのも愚かだ。この映画でさらされる「原女性」の実相は、一方でマリア幻想をもつキリスト教に取っては魔女的なものの源泉のようにみえるだろう。

2002年 アイルランド・イギリス ピーター・マラン