心みだれて

 脚本家・監督のノーラ・エフロンの原作で、自身のカール・バーンスタインとの結婚生活を題材にしている。彼女はこのあとメグ・ライアンの「恋人たちの予感」「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の脚本を書き、後二者では監督もして「ロマンチック・コメディ」の名手とされた。いずれもハッピー・エンドの映画だが、自身の経験によるこの映画はそうではない。浮気による夫婦間の絆の崩落を真面目に描いていて、相手役をジャック・ニコルソンにするくらいだから、ハッピーエンドになりようがなく、結局排他的対恋愛は継続不可能という結論になる。彼女は結局この結婚を含めて三度結婚したらしいが、そういう彼女がラブ・ロマンス映画を作る、というのはどういう心理だろう。それにしてもウォーター・ゲート事件を暴いた、硬派のはずのバーンスタインがこの話ではプレイボーイにされ、最後はパイまで投げつけられている。
 若くスマートなジェフ・ダニエルズやチョイ役のケビン・スペイシーなど面白い役者が出ていた。メリル・ストリープも若いが全編殆ど妊婦姿である。

1986年 アメリカ マイク・ニコルズ