マーガレット

 見ていて不満とイライラが蓄積する映画。よそ見をして人をひき殺したバスの運転手を告発するのはよいが、そもそも運転手によそ見をさせたのは自分であり、その自分への追及がどう見てもおざなり。周囲の関係者もあまり彼女を責めないのはどういうわけだ。運転手に正当な罰を与えたい、というとき、自分にはどんな罰を与えるつもりなのだろう。授業で取り上げられた「マーガレット」という詩が話のキモのようであるが、よく分からない。ジェラルド・マンリー・ホプキンスの詩「Spring and Fall」。舞い散る落ち葉に悲しみを覚えるマーガレットという幼子に、語り手が「枯れゆくさだめは生きるものの営みであり、その悲しみはおまえ自身に向けられたものなのだ」と諭す、というような内容の詩なのだが。当然リサの行為は被害者のためではなく自分の罪の意識を晴らさんがためなので、結局彼女の行為を一言で言えば「ハタ迷惑」。そもそも証言をひっくり返すというハタ迷惑からはじまって、自分にヤクを教えたノンポリ学生(マコーレー・カルキンの弟、キーラン・カルキン)にあっさり処女を与えて「中出し」されちゃうし、かと言うと数学教師に好きだといって誘惑し、後でその奥さんの前で「中絶した」など謎をかけるし。これを成人して、美人というには少しビミョーな顔つきになったアンナ・パキンが演ずる。誰が演ろうと、わめき散らすだけの西欧の女性にはうんざりさせられるのだが、彼女が演るとひとしおうんざり度が高い。

2011年アメリカ ケネス・ロナーガン