マーラー

 基本的に語り口の良い映画のような出だしだったが、ウィーン音楽界のボス、コジマ・ワーグナーに取り入るため、ユダヤ教からカトリックに改宗するマーラーの内面をカリカチュア的に描いたシーン、ハーケンクロイツの元で、コジマに鞭打たれたり、ユダヤの星を鍛造してキリストの剣に変えたりする、あまりにも解りやす過ぎるシーンは、少し安っぽかった。何分マーラーの音楽をよく知らないのでアレだけれど、言葉に表わせないものを表現するのが音楽、という言われて見ればそのとおりの音楽観を描くのに、映画というのは適したメディアなのではあるが。

1974年 イギリス ケン・ラッセル