嘆きの天使

 これがドイツ最初のトーキー映画らしい。悪女によって滅びる世間知らずの男性の話。一見ラブコメデイー風に進行して行くが、最後になってようやく悲劇と分る。意外に太目の若いディートリッヒが、大したことのない唄を歌っている。原作はハインリヒ・マンらしい。
 監督の名前が偉そうなので調べてみたら、彼はもともとウィーン生まれのドイツ系ユダヤ人で、その名はアメリカにわたり、映画界に入ったときの名乗りであり、別に貴族であったわけではなかった。エルンスト・ルビッチビリー・ワイルダーフリッツ・ラングなど、ドイツからハリウッドに移った監督の一人かと思ったが、彼はアメリカには若い頃に渡っておりアメリカ育ちなので、ラングなどの範疇とはすこし違うことになる。この映画でスタンバーグが見出したディートリッヒを、MGMのグレタ・ガルボに対抗してパラマウントが売り出し、スタンバーグとのコンビでディートリッヒはアメリカで成功を収めた。

1930年 ドイツ ジョセフ・フォン・スタンバーグ