NINE ナイン

 映画についての映画という再帰的映画。いかんせん話が古すぎて、その古すぎること昔の日本の私小説の如し。日本の私小説作家は、自分が芸術家であることを証明するということだけのために、自ら放蕩生活をおくってそれを綴るが、それはフェリーニが「8 1/2」でしたことと同じことである。本質的にショボい話を今回、なんとミュージカルにしてくれたわけで、豪勢きわまるみみっちさというものを見せてくれたわけだ。フェリーニ崇拝者にはなにか面白いことが見出せる映画であるのだろうけれど、フェリーニ嫌いの私は、ただソフィア・ローレン以下アカデミー賞女優を六人も集めた豪華な女優陣が、ジュディ・デンチにいたるまで、自ら歌唱しているということに感心するくらいのことしかすることがない。主人公グイド役には当初ハビエル・バルデムが候補に上がっていたらしい。彼の主演だったら見なくて済んだのに、なまじダニエル・デイ=ルイスだったので見てしまった。失敗。

2009年 米 ロブ・マーシャル