椿三十郎

 織田裕二の三十郎が、三船敏郎そっくりに仕上がっている。三船の演技の完全なコピーのようだ。室戸半兵衛もなかなかに良い。一方、あの二枚目だった風間杜夫がすっかり三枚目もいいところに。これで伊藤雄之助役は誰がなるのかと思いきや藤田まこと、で納得。「馬に乗ってる人のほうが馬より顔が長い」というオリジナルのセリフがそのまま使える。もし再々度椿三十郎を作るときの、この城代家老役は、長い顔という条件で考えると、いよいよ役所広司の出番か。ヒマにまかせて計測してみたら、それぞれの顔のタテ・ヨコ比は、伊藤・藤田が1.5で、役所は1.6あるから十分である。しかしウマヅラと言うのは単なる長さではなく間延びした顔というニュアンスがあるから、二枚目の役所は不向きか。かといって三十郎を演ずるにはもう年が行き過ぎている。「椿三十郎、もうすぐ六十郎」になってしまう。

2007年 森田芳光