ホースメン

 十字架で惨殺された人間の死体を崇めるおどろおどろしい宗教、耶蘇教の怪異性ここにきわまれり。愛の宗教ならぬ、憎悪の一神教キリスト教の病的な想像力が生んだ酷薄無残な話。親から虐待を受けた人間がネットで組織をつくり、親たちに復讐していくという話で、いちいち黙示録か何かのしょうもない概念をありがたがって借りてくるのが猪口才である。この種の不毛な観念性、非寛容性の文明がまだ当分は地球を支配し続けるのだろうか。この文明の対抗馬は、同じく憎悪の一神教たる共産主義が敗退した後は、「原理主義」たるイスラムの世界ということになるが、これまた観念的、非寛容的な宗教の世界である。覇権交代してもあまり変わり映えがしない。父/神に虐待を受けた子/キリストと、その異母弟マホメットの報復譚がまだまだ続くのだ。まったくいい加減にして欲しい。親はなくとも子は育つ、というではないか(とはいえ本邦でも最近は連日のように子供の虐待死のニュースが続いている。親がなければ社会が子供を包摂していく、というような構造はもう消滅しているのだ)。

2009年 米 ジョナス・アカ―ランド監督