血まみれギャングママ

 1930年代の実在のギャング団、バーカー一家を材としたもの。なぜこんなまるまるバカな胸が悪くなるような家族の話を映画にしたのかといぶかったが、「俺たちに明日はない」(1967)の二匹目のどぜうを狙ってB級映画の帝王、ロジャー・コーマンが作ったものらしい。「俺たちに明日はない」も、配給会社はB級映画だと考えていたが、公開すると若者の共感を得て大ヒットし、すっかりアメリカン・ニューシネマの一角を占める作品になってしまった。二匹目のどぜうはそうは行かなかった。ヒロインたるケイトが少女のとき兄弟に抑えられ父親に犯されるというシーンから始まるが、ケイト(シェリー・ウィンタース)が「ママ」となってからもなんだか自分の四人の息子と代わりばんこに「寝て」いたりするというなんともおどろおどろしい内容である。ファミリーという一線を引き、その外部の人間に対しては、あっさり殺すことをなんとも思わぬほど冷酷であるが、線の内部ではいっぱしのモラリストを気取っている、というもっとも始末の悪い、もっとも気持ちの悪い人間たちである。ロバート・デ・ニーロシェリー・ウィンターズの演技を褒めてもしょうがない。

1970年 米 ロジャー・コーマン