ローマの休日 (5)

 ドストエフスキー「カラマゾフの兄弟」の続編が構想されたり、漱石の未完の遺作、「明暗「がその完結を期して「続・明暗」として創作されたりしている。映画の続編を考えるというのも楽しいかもしれない。
 
 「続・ローマの休日

 アメリカに帰国したジョー・ブラッドレーのもとに、ある日、ローマから電話が入る。カメラマンのアーヴィングだ。「逃げろ」、と彼は言った。「危ないぞ、身を隠せ」
 アーヴィングは自宅にいるところを数人の男に襲撃され、写真のネガを強奪された。あのアン王女のスナップ写真である。「俺は、ネガを取られるだけで済んだが、おまえはそうは行かないかもしれない」
 アン王女は、ローマを去り帰国するとすぐに某国の王子と結婚した。電撃結婚であるが、以前からの予定であると公表され、背景を追及しようとする記事は差し止められた。一年後皇子の誕生が発表されたが、誕生自体はかなり前のことだったらしい。欧州に戦雲が陰り、アン王女の婚姻がもたらした国同士の結びつきのいかんが戦況を左右することが予測された。好戦派は両国の断絶を画策し、アン王女のスキャンダルを探し、ローマ滞在時の不自然な出来事に着目した。アン王女に写真らしきものを渡した、あのカメラマンを探せ。その隣にいた長身のアメリカ人も怪しい。アン王女の手元の写真はいつの間にか紛失していた。アン王女は側近の反対を押し切り、ニューヨーク訪問を決行する。王女の位を捨てて、恋を成就すべきか、その堅守によって戦争を回避すべきか。アンは滞在初日の夜、密かに宿舎を抜け出し、ジョーとの待合場所に向かう。…ジョーは欧州の好戦派とアメリカの右翼との結託を暴くことに記者生命を賭けていた。
 ―というような話。こういう映画があれば是非見てみたいものだ。
しかし、アン王女に、そしてジョー・ブラッドレーに扮しうる役者は、もうどこを探しても存在しないような気がする。