ローマの休日 (7)

 「新・ローマの休日」というリメイク版があるらしい。そもそもリメイク版に良い映画があった例はない。この映画はまだ見る機会がないが、主演の二人の顔を見てもあまり期待できない。というより見ないほうがいい、と思わせるご面相だ。
 映画というものの受容は、どうしてもその映画を見た時期や年齢に影響されるので、オリジナル/リメイクの良し悪しの判定は、純粋に技術的な要素を除けば、あくまでも個人的な趣味判断にとどまる。私にとって決定的にダメなリメイク版は、「シャレード」のそれで、映像も汚く話も暗く、全く許しがたく面白くないものだった。「太陽がいっぱい」のリメイク「リプリー」は全く別の映画だと思えば許容できる。「サブウェイ123激突」なる映画は、是非オリジナルの「サブウェイ・パニック」の一見を勧めたい。味わいというものがオリジナルにはある。リメイク版でいいのは「ロミオとジュリエット」(1968年版)だが、何回も映画化されるシェイクスピアの作品はリメイクとは呼べないだろう。ただし現代風にアレンジした1996年のディカプリオ版はいただけない。また「宇宙戦争」「宇宙が静止する日」などのSFものはリメイク版という最新バージョンの方が映像的にも面白い。ただし、「キングコング」のようにやりすぎて、特撮のテンコ盛りみたいになってしまった映画もある。
 さて、「新・ローマの休日」であるが、王女役のキャサリン・オクセンバーグはともかく、新聞記者の役のトム・コンティがいけない。イギリス出身の俳優らしいが顔がどう見てもバリバリの暑苦しいイタリア系。あの新聞記者はアメリカ人でなければならない。ヨーロッパの深奥から現われ出た王女と、そのヨーロッパから切断されたアメリカから来た記者。「ローマの休日」とは二人の異邦人の間の「異国の恋」の物語なのだ。