キング・コング

周囲の人間からつまらないからやめたほうがいいとさんざん言われたが、しかし見てみるとやっぱり、単純に面白い。今回の作品はコングのみならず、恐竜が出たり、巨大な節足動物やイソギンチャクの化け物やら吸血蝙蝠やらが出たりと、怪物のてんこ盛りである。少しキャラが過剰すぎて、恐竜の暴走シーンはともかく、陰湿な谷底で節足動物に襲われるシーンは、いくらヒロインを救い出す過程にサスペンスを組み入れるための手段であったにせよ、やり過ぎのように思えた。
ようやくコングが捕獲され、一行がニューヨークに帰還した後のシーンに使われた、再現された戦前のブロードウェイの光渦巻く光景は、例えば、それなりに感心した「血と骨」の戦後の大坂の風景に較べると、その再現度の贅沢さという点で数段勝るものがあり、終始その金のかかったスペクタクルに圧倒された(アカデミー視覚効果賞を受賞している)。
 「黒字亡国」「経済敗走」「マネー敗戦」等々の本を読めば、日本の富がアメリカに収奪される構造を思い知らされる(これらの本はリベラルに―アンチ資本主義に偏向しすぎていると思うが)のに、その富を蕩尽しつくすかのようなハデなハリウッド映画を単純に享楽してしまうのはどういうわけか。ナオミ・ワッツの美貌の前にそんな浮世のことは忘れ去ってしまったのか。

2005年 アメリカ ピーター・ジャクソン