ラヂオの時間

良かった点。

 変に依怙地で偏屈な芸人魂を演じ出してみせる細川俊之。どこにでもいそうな平均的日本人中間管理職のフンイキを出す西村。これもどこにもでもいそうな存在感のない芸能界の業界人のフンイキを出す布施明。最後に美声を聞かせてくれるところも良い。鈴木京香は理屈抜きで良い。シロウトを演じてシロウト臭さを出しすぎたキライがあるけれど。

悪かった点。

 生意気で気障なディレクターに扮した唐沢某。これはシナリオの問題か。とにかくどんなくだらないホンでも仕事だからやるだけ、というシニカルな生き方をしながら、最後に製作を依頼されると一転、「ホンを見てからだ」と権力を誇示するという論理的非一貫性、というよりカッコのつけ方。局所局所にプチ権力が棲息し、ために興行界をチミモウリョウの世界にしている、という事情がうかがえる話ではあるけれど。こういう男を肯定的に描けるほど斯界に馴染んでいなければ、作者もここまでは伸してこれなかったか。

1997年 三谷幸喜