グッバイ・ジョー

 アル中で、ワイフ・ビーターで、掃除夫の父親を持つ少年が、学校の偏見といじめとから、まっとうな学校生活が送れず、ひたすら窃盗を繰り返すようになってしまい、最後は少年院に入れられてしまうというお話。少年は終業後のバイトと窃盗で稼いだ金で、一つは父親の作った借金を返してまわり、一つは父親が壊してしまった母親のレコード・コレクションの買戻しに充てるのだが、少年が少年院に入った後で初めてレコードの存在を知り、複雑な思いで母親がそれを聴いているシーンより(母親はどんなに嬉しくとも多分もう笑いも涙も失ってしまっているのである)、父親が最後に少年に対して、I love you というその言葉に、まるで生まれて初めてその言葉を言われたかのように少年が衝撃を受けるシーンからは、あらためてアメリカ人にとってのこの言葉の意味するところの別格の重みが伝わってきた。

1999年 アメリカ フランク・ウェイリー