心のままに/トゥーム・ストーン

 標記の二つの映画に共通するものは何か。ともに1993年製作の映画だが、前者はリチャード・ギア主演の恋愛映画で、後者はカート・ラッセル主演の、ワイアット・アープとドク・ホリディが出てくる西部劇。
 答はショパン夜想曲19番(op72-1)である。前者は、躁鬱病を患っている主人公ギアが昔は神童で3歳でピアノを弾いたという設定なので、ショパンが出てきても不思議ではないが、ゴテゴテの西部劇たる後者の中でショパンの曲に遭遇したときは驚いた。ヴァル・キルマー扮するドク・ホリディーが酒場でピアノを弾く。それが他ならぬこの19番で、「誰の曲だ」「フレデリックショパンという野郎だよ(Frederic fucking Chopin)」というやりとりが面白い。パリのサロンで優雅にピアノを弾いていたショパンが没して二年後にアメリジョージア州で、ドクが生まれたという勘定になる。
 「戦場のピアニスト」は同じ夜想曲の20番で有名だが、サントラには19番も入っている。20番に勝るとも劣らないこの名曲の調べを探して、この映画を三回も見たが、いったいどのシーンで流れたのかついに分らなかった。

心のままに 1993年 マイク・フィギス
トゥームストーン 1993年 ジョン・P・コストマス