太陽と月に背いて

 思わず見たくなってしまう魅惑的な邦題がつけられた映画だが、ランボーヴェルレーヌについて何の予断も持たない人間がこの映画を見たら、イヤミでひとりよがりな男たちの勝手極まる愛欲の話としか思えないだろう。そんな男を演ずるという意味ではディカプリオは適役ではないか。ヴェルレーヌの妻のマチルダに扮したロマーヌ・ボーランジェこそ素晴らしい。まるでルノワールの絵そのもののような、こぼれるばかりの豊満な肢体、薔薇色の肢体。私は彼女の姿にしばし陶然とした。
 ランボーは天才で通っているが、彼の詩はジョン・レノンの詩ほどにも世界にセンセーションを与ええたのだろうか。ご多聞に漏れず、ヴェルレーヌランボーも読んではいるが、「海に溶けた太陽が永遠だ」という詩句など、今日日、どんなにシケたソングライターにも書けそうな気がする。

1995年 イギリス アニエシュカ・ホランド