ママの泣いた日

 ハイ・ミセスの恋愛物だったら女優はせめてマーシャ・メイソンでも起用してほしい。ジョアン・アレンは、CIA部員の役などには似合いこそすれ、恋愛映画となれば、せいぜい恋愛とはまるで縁のないハイミスの教師か公務員という脇役どまりだろう。つまりハナから観客は秘書と駆け落ちした亭主に同情することになってしまう。マーシャなら、なぜこんなに素敵な女性を(性的魅惑が残存している女を)と思い、やがて現れるケヴィン・コスナーをやっかみだすだろう。つまり、映画の話に入っていけることになる。その辺は趣味判断なので致し方なし。それにつけてもアメリカ人の度し難さを最近ますます感じるところだ。他人に迷惑をかけない、という道徳すら、人ではなく神と向き合っているらしい彼らには無縁のことであるらしい。マーシャ・メイソンの画像をググってみたら、恐ろしく太ってしまった彼女の笑顔に襲われた。これではむしろジョアンのほうがまし、か。

2005年 米  マイク・バインダー