ジャイアンツ

 真正のゲイだったロック・ハドソンとバイセクシュアルのジェームス・ディーンが世紀の美女エリザベス・テイラーを巡って恋の鞘当をした映画、ということを知っている今でも好きな映画だ。テキサスの大牧場主のハドソンが、メキシコ人の牧童を怠け者といって侮蔑するとき、ついその白人の偏見の視線を共にしてしまうが、それはやはり白人に追随してきた日本人の目に過ぎない。メキシコ人は決して怠け者なのではない。彼らは資本主義の神経症にかかっていないだけだ。のんびりゆったり暮らしても古来から彼らは生存を維持していけたのだ。だがこういう生活の様式が侵略者の西欧人の目から見たとき、非効率なものとして観測される。その非効率性にプロテスタント的な勤勉性が、効率性を武器にしてつけこんだ。白人は只同様の値段で彼等の土地を収用してしまう。牧畜という生産様式の根本の土台を入手して白人は次にメキシコ人の労働の簒奪を始める。しかしこの牧畜という生産様式は、次なる石油発掘というさらなる効率性の軍門に下る。名家ベネディクト家は没落を始め、ジェット・リンクという成りあがりものの時代が始まる。ベネディクトといってもそもそもは単なる牛追いの牧童に過ぎなかったのだが、没落の予兆を前に、没落すべきものとしての彼の貴族性が完成される。

1956年 米 ジョージ・スティーヴンス