朝な夕なに

 美しい女教師ルート・ロイヴェリック。このような女教師がギムナジウムに現れたら、悲劇的な恋愛が起こらざるを得ない。ましてこの女教師が、生徒との間に人間的な親しみを求める開明的な教師であればなおさらのこと。当然、彼女は一人の男子生徒の恋情の対象となる。「真夜中のブルース」。作中、生徒たちによって奏でられるこの主題曲は、自殺を考えてしまうほど思いつめたその男子生徒の側にあり、女教師ともその曲想は共有されなければならないはずだが、結局、彼女は青年の純愛などなかったかのように、校長からの求愛を一も二もなく受けてしまう。結局ヒロインとは無縁だったこの曲が、映画の主題曲となっているというのは一つの皮肉以外の何ものでもないが、制作者も出演者も、誰もその皮肉を感知していないかのようだ。
 美しいタイトルと美しいヒロイン、この映画が私の愛顧する映画の一つとなってくれればどんなに良かったことか。しかし私はもうこの物語に欺瞞しか見出し得ず、エンディングではほとんど世界に罅が入ってしまうような思いをさせられただけだった。

1957年 西独 ヴォルフガング・リーベンアイナー