大空に乾杯

 吉永小百合和泉雅子、十朱幸代という往年の可愛いお嬢さん方が大挙出演しているにも係わらず、ドラマとしては見るべきものがなく、怱々に興味を失う。せっかく航空会社が舞台なのだから、ハイジャックでも起したらどうか、と言いたくなるくらいドラマツルギーというものが不在だった。石坂洋次郎の小説のように跳ねっかえりの若者が出て、妙に現実的だったり妙に純情だったりするだけ。吉永小百合が、両親に愛のない結婚をしたからと言って、離婚届用紙を突き出すあたり、私が親だったら殴っているところだ。愛のない結婚で生まれた自分が不潔だわ、とか言いだすに至っては。それで両親が恐れ入ってちゃんと改悛したりするのは情けない。原作は若山二郎で、このような青春もの、お嬢さんものを大量にものした貸本小説の売れっ子作家だったらしい。しかし仮にも一世を風靡したような物語がこんなにも完璧に無化してしまうものだろうか。それはどのような文芸作品も逃れられない運命なのか、と思いたくもなるが、この原作はとりあえず「通俗小説」という便利な言葉で除外しておくのがいいだろう。

1966年 斉藤武