目撃

 検事に扮したローラ・リニーが、結局泥棒の父親クリント・イーストウッドと和解するのだが、和解後の、愛情に満ちた柔和な笑顔が、そういう笑顔を見せないときは彼女にそれを求めていたくせに、いざそれを見せてくれた段になって、彼女に求めているものがそれとは違うことに気づく。やはり彼女は、ひたすら冷徹で男など軽侮しているような超絶性がいいのだ。かつては高慢ちきともいえるその態度に彼女の演技の勘違いを見ていたくせに、今度はあまりに分かりやすい、父親に愛されているのに気づき、それが嬉しいという表情が、検事という彼女の職業からはあまりに少女っぽくすぎて、なんとなくこれまた勘違いの演技の様に思えてきた。

1997年 米 クリント・イーストウッド