ルイーズに訪れた恋は

 「恋に揺れる中年女性の心情を繊細かつリアルに演じきった」と評にある。これはほとんど決まり文句のような評なので大した意味はないが、この映画を最後まで見てそう感じる人がいるとすれば、その人はよほどリアルの意味が分かっている人に違いない。すなわち今やリアルとは極度に個的なものであって、他者から見ればそれがどんなに非現実的なものであろうと、その人その人にとってリアルであればそれがリアルなのだ。
 ローラ・リニーのその容姿から私が不可避的に形成してしまう女性という心象と、劇中の彼女の姿とはいつも微妙に食い違うのだが、この映画でもそれは同様だった。つまり彼女は常に私にとって非現実的なキャラクターを演ずる女優だった。ルイーズが突然パワハラを行使して初恋の男性に酷似しているという学生スコットと唐突な交情をするとき、彼女のその非現実性がこの場面に奇妙な影響を及ぼして、強烈なエロチシズムをかもし出した。このシーンのあとも私にとっては非現実的な、あまり納得のいかない展開(過去へのこだわりが突然のように消滅してしまうあたり)を見せて終わるが、それは予想していた通りなのでどうでもいい。ただこの交情のシーン(「運命の女」、ダイアン・レインの不倫シーンに匹敵するようなエロチシズム)で、私のローラ・リニーに対して抱いていた片付かない気持ちがなんとなく片付いてしまったような気がした。

2004年 米 デイラン・キッド