隠された記憶

 だるい映画。だるすぎて途中寝てしまったので、物語の鍵になるビデオテープの送り手が明らかになるシーンを見逃したのかと思い、そのあたりを何度も見直したが分からない。DVD付録の監督インタビューを見たら、人を食ったような顔をした監督が「観客の解釈にゆだねる」と言っていた。解釈も何もそもそも誰かが送ること自体不可能という設定になっている。つまり子供とその友人が送り手だとしても、送られてきたテープの中にはどう考えてもそれが不可能なものも含まれているのだ。
 あまりに明快すぎるストーリーでは理に落ちるということがあるから、ある程度のミスティフィケーションは作品の魅力を高める効果をもたらす。しかしその匙加減は難しい。私にとってはこの作はあまりにも過剰にミスティファイされすぎていて、なんだか監督に愚弄されたような気がした。
 どうやらこれは「芸術」らしく、単なるミステリーと思ってみたのが間違いだったらしい。いずれにしてもテンポが悪く、この間延び振りが映画の高尚さを意味しているとしたら、こんにな高尚さは願い下げにしたい。映画音楽をまったく使用していないということも、この映画の間の悪さを強調しただけで、その点、同じく音楽が全くない「ノー・カントリー」とはえらい違いだ。

2005年 仏 ミヒャエル・ハネケ