嵐が丘 1

 直近で見たのは、1992年のリメイク版。レイフ・ファインズ主演のものだが、彼の扮するヒースクリフはそれほど魅力がない。とはいえ、誰が演じてもそもそもヒースクリフが魅力ある人物であるわけがないのだが。キャシーに扮したジュリエット・ビノシュはポピュラーな女優であるだけ、オリジナルの1939年の、主演作がほとんどそれ一作しかないといっても良いマール・オベロンに較べたら、伝説のヒロインを演じるには不利である。キャシーのような野生的で活力ある女性がある種の野卑な笑い声を発するのは自然であるが、しかし、さすがにジュリエットの「イヒヒヒヒ」とという笑い声は、少なくともヒースクリフの心を奪い、その一生を狂わせた女性のものにしてはあまりに軽躁すぎはしないか。

1992年 イギリス ピーター・コズミンスキー