ウォーリー

 意外に広がりのある世界が展開される物語だが、このような地球の命運を語る映画の場合、昔なら、義理でも東洋人やアラビア人やらを地球人の一員として出したものだが、この映画では、地球文明の生き残り=欧米人(英語人種)として、その余はすっぱり捨像している。彼らだけが地球の崩壊を生き延び、宇宙船の中で高度の消費生活を送っている。アメリカ人達も、冷戦崩壊後はすでに同盟関係が分からなくなっているのだ。このファンタジックなアニメから、豊かな物質生活のレベル(そのために彼らは不健康に肥満しているのだが)を落とさないために、その他の世界は生き残るな、というアメリカ人の意志を感じるのは少し病的だが、少なくとも彼らの、その他の世界の命運にはまったく関心がないという心性、あるいは配慮する余裕のなさが見て取れるのは確かだ。
 自分達が生き延びた人類の一員だと思える限り感動的な映画であるが、この世界には自分達はカウントされておらず除外されているのだ、ということはイスラム系の民族でなくとも感じるだろう。

2008年 米 ピクサー/ディズニー アンドリュー・スタントン