オデッサ・ファイル

 原作を面白く読み、この映画も昔面白く見たが、再見してみると、主人公のジャーナリストが追跡する元ナチスSS将校が、実は戦争中に彼の父親(独軍将校)を殺しており、彼の追求の情熱の源泉がユダヤ人問題という「公憤」ではなく、むしろ父の仇討ちという「私情」だったことが、最後の最後になって明かされるという点の、これは秘密の暴露を最後まで引き伸ばす作劇上の定法とはいえその不自然さが、肩透かしにあったみたいで少し引っかかった。
 主人公の恋人が、トンネル内で暴漢に襲われるシーンで、どうも見たことのあるトンネルだと思ったら、かのエルベ・トンネルだった。初見と再見の間に、私もあの古びたエレベータに乗って川底のさらに下の方へと降下する機会を得ていたのだ。そう思ってみているとちゃんとセリフでもエルベ・トンネル、と言っている。初見のときはそれよりもその恋人に扮した女優(マリー・タム)の一種超絶的な美しさにただ気をとられていただけなのか。

1974年 イギリス・西独 ロナルド・ニーム