ロリータ

 英国製のこの映画は2時間33分と長い。もう少しコンパクトにまとめてくれないものかと思う。「ロリータ」ってこんなつまらない話だっけ、という感想を持ったのは多分にその長さのためもある。米国製、ジェレミー・アイアンのものはそれなりに面白く見たけれど、1962年の本作は退屈である。調べてみると米国製も2時間17分とこれも長い。作の良し悪しは長さのせいだけではなかったか。
 当時の検閲の厳しさから、この旧作は性描写が皆無に近いほど抑えられている。ために観客はほとんどロリータから性的な刺激を受けない。もともと原作では12歳の少女を、概ね女優の都合とモラル上の遠慮で、両作とも15歳にしていることからして、ナボコフの原作からは幾分か良識の方にずれ込んでいるのだが、それに加えて、ロリータのスー・リオンが、どことなくアン・マーグレットを思わせる美少女であるにもかかわらず、不思議なほど魅力がなく(その点は新作のドミニク・スエィンも同断だが)、しかも<サービス映像>もなし、となると、とたんに「ロリータ」の話自体がつまらないものになってしまう。
 しかし、映画の評価を最終的に分けたのは、ロリータを篭絡する男、キルティの出来の差ではないかと思う。新作のほうのフランク・ランジェラは性の魔性を表わすのにふさわしい、一種怪物的な役者と思えたが、怪物性では負けないはずの旧作のピーター・セラーズが、ベースとなる性描写が無いために、単なる道化役で終ってしまっている。セラーズファンとしてはつくづく残念な話だ。

1962年 英 スタンリー・キューブリック
1997年 米 エイドリアン・ライン