シベールの日曜日

 フランス版ロリータ。製作年は「ロリータ」英国版と同年であるが、かなり先行的に「ロリータ愛」を扱ったもの、という位置づけができるのではないか。かなり早い時期の、監督と観客の共犯事例として。作中のシベールは12歳、それを演じたパトリシア・ゴッジ13歳。もちろんこの映画には、12歳のダコタ・ファニングが出演した「ハウンド・ドッグ」とは違い、性を思わせるシーンなど微塵もない。あるのは少女幻想である。
 少女という存在自体の他界性と、男の記憶の喪失という他界性との邂逅による幻想愛の世界。
 しかし、この幻想に外側から形を与えているのは、ナイフを持ったピエールを変質者と見なした警官の想念に代表される、世間の性的なファンタジーである。この性的ファンタジーを駆動するものについて、すでに処女レイプ幻想の水位まで暴かれているので、この映画が、純然たる精神の世界だけでの「愛」の話として受け入れられる余地は、現在はない。

1962年 仏  セルジュ・ブールギニョン