モンスター

 この上なく悲惨極まる話。幼年時に受けた祖父と兄からの性的虐待、アル中の母親の蒸発、精神病の父親の自殺。弟妹を養うためにやむなく体を売ったが、感謝されるどころか疎まれ蔑まれる。その後娼婦として生きるが、身を守るために客を射殺したことがきっかけで、次々と客を殺す連続殺人「鬼」となる。親の愛を受けることなく育った彼女に別の人生は果たしてありえただろうか。最後には自分に情けをかけてくれた善良な人間をも、正体を知られたことで殺さざるを得なくなってしまう。人生とはなんと恐ろしい場所であることか。
 この映画のドキュメンタリー版に「シリアル・キラー アイリーン「モンスター」と呼ばれた女」(2003年 イギリス)があるが、まだ見る機会を得ていない。そちらではメディアの注目を集めている彼女を利用して金儲けを企む人物や、彼女を死刑囚にするための警察の陰謀も暴かれており、ますます恐ろしい場所としての人生を浮かび上がらせているもののようだ。

2003年 米・独 パティ・ジェンキンス