ラスト・ブラッド

 人気劇画の実写版らしい。ヴァンパイアものらしいので二の足を踏んだが、韓国映画と思いきや香港映画で、ワイヤーアクション系。それなりに見せるが、鬼=悪と人間=善との戦い、悪の排除による世界救出という、恐ろしく古いフレーム内の話に過ぎない。いつまでこの手の話を人間は享楽することが出来るのか。
 刀身に切り刻まれる肉片と血飛沫の美的処理により、本当は見るに耐えないものを享楽可能なものに変形させている、偽りの表象処理。最初は恐る恐る、慣れるにつれどのような殺戮傷害シーンも安心して見られるようになる。眼球に刀身が突き刺さるシーンまで直視可能なレベルにソフト化されるだろうことが予見できるのだ。本当は地震で瓦礫に埋まった死体のように直視できないものであるはずなのに。

2008年 香港・フランス クリス・ナオン