フィールド・オブ・ドリームス

 奇跡的に可能だった、悠久の、魂の救済の物語。
 最後に主人公の父親が若い青年として現れるシーンでは思わず涙がこぼれた。
 そんなことありえない、というつまらない異議は、実際に父親が投げ返したボールが、ずしりとグローブを打つ手ごたえの現実性の前に、色褪せてしまうだろう。
 まだ挫折を知らない、無限の可能性に満ちた、青年としての父親。スポーツの汗で匂い立つような美しい青年。野球だけが人生の価値だった父親を、かつて主人公は否定し去っていた。
 深層心理のその痛みが、主人公に球場を作らせ、その球場に父親を呼ばしめる。これはなんという虚構の勝利だろう。誰しもが持っている、父親を乗り越えたときの心の痛み、その痛みへの癒しの希求を、この映画はアイオワの広大な玉蜀黍畑の中で、叶えることに成功したのだ。
 世に忘れ去られた作家、テレンス・マン(サリンジャーがモデル)に扮したジェームズ・アール・ジョーンズが素晴らしい。アーチー・グラハムという人物の話を、町の住人から聞き出すときの、洞察と慈愛に満ちた眼差し。

1989年 米 フィル・アルデン・ロビンソン