第17捕虜収容所

 ウィリアム・ホールデンの美貌をアテにして見たのだが、今回それほど美貌ぶりが出てないのは兵隊カットのため彼の波打つ美髪がないためか。しかしこれでアカデミー主演賞を取った由である。非常に若いピーター・グレーヴスが出ているのが一興。
 この収容所は一応非人道的であるとしているようだが、とてもとても人道的でありすぎて信用できない。相手がユダヤ人でなく米軍人であっても収容所である限り必ず看守―捕虜間の病理的心理が発現するはずである。しかし、そのような人間心理を暴く「エス」のような映画より、擬似現実的な娯楽映画こそが世に受け入れられる。「大脱走」なども同様の映画なのだが、こういう衛生的な映画にあまり毒されると、グァンタナモ基地やアブグレイブ刑務所での捕虜虐待という惨たらしい現実を知らされてたじろぐはめになる。
 映画の教育的効果で言えば、あるいはこれらの映画は刑務所や収容所の人間化にあるいは貢献するところがあるのかも知れない。しかし、それは頼みにするにはあまりに細すぎる線であるように思う。

1953年 米 ビリー・ワイルダー