反撥

 カトリーヌ・ドヌーヴ22歳。妖艶な美女であるべき彼女が、たかだかシシー・スペイセク的役どころに就いているという、もったいない映画。あの時代にはこの映画は多分に批評的であり映像的にも斬新であったのだろうが、現在では、これはただの通俗的サイコ・ホラー映画にしか見えない。性というものが徐々に露わにされていく時代に生きるキャロルの、性に対する嫌悪とそこから来る錯乱は、同時代で見れば十分感情移入が可能だったと思うが、性が完全にあからさまになった、今という時代に見ると、ポランスキーの映像フェティシズムもなんだか煩わしく感じられるだけだ。もともとドヌーヴの美の誤用であるという不満があるから、こうなる前に精神分析医にでも行っとけよ、という突っ放した感想しかでてこない。ヒッチコックの「サイコ」はすでに1960年に作られているが、人間の内面というものを映像化するのも映画の誤用のような気がする。

1964年 英国 ロマン・ポランスキー