8人の女たち

 カトリーヌ・ドヌーヴ59歳。この年齢で、実に堂々と美しい。女たちがすべて色違いの原色の衣装をまとうが、舞台ならともかく映画ではなんだか書割を見ているようで滑稽な感じ。もちろんミュージカルだから、「滑稽」と感じるような感性は封じ込めて見る必要がある。しかし話が「雪密室」という今時何が面白いのかという推理ものである。誰かが殺された犯人は誰だなどという話に面白さを見出している人には、この世にはもっと面白いことがたくさんあるのにと言いたくなる。最大の謎は、人間の「存在」自体の謎ではないか。
 唯一の収穫はドヌーヴのちょっとしたレズ・シーンくらいか。これも全体のストーリとの関係が良く分からないが、すこしは人間の存在の謎の片鱗がある。イザベル・ユペールが、当初いかにもハイ・ミスのいでたちで出たのはもちろん訳があって、ラストで一応本来の美女に戻る。しかしそれもドヌーヴの妖艶な熟女美の前ではかすんで見えるだけなのは致し方なし。それから黒人の使用人役の女性、てっきりすがれたメーキャップをしたクィーン・ラティファかと思ったが、そんなわけはなく別のフランス人の女優だった。ここにもうすこし美人を充てないと全体のバランスが悪い。

2002年 仏 フランソワ・オゾン